ハードディスク・ドライブの性能と信頼性は,非常に精密な部品と構造によって確保されている。その内部構造を知ることで,HDDの仕様を読み解く力が高まるだろう。なお,本講座は2006年に公開した「【初級】知っておきたいストレージの基礎」を基に,2009年の状況に合わせて加筆・修正した改訂版である。

吉岡 雄
日本クアンタム ストレージ

 前回述べたように,HDDには様々な種類があり,入出力性能を重視したハイエンド・モデルから大容量・低価格モデルまで,目的・用途に合わせて選べる。選択時の主なポイントは,(1)容量(記録密度),(2)入出力性能,(3)信頼性---である。今回は,(2)入出力性能と(3)信頼性について,HDDの基本構造を見ながら解説していく。

◆ポイント(2):入出力性能

 HDDの性能は,どれだけ速く目的のデータを読み書きできるかに依存する。性能を見極めるには,まず目的のデータの格納場所(セクター)に到着するまでの時間(アクセス・タイム)が鍵となる。さらに目的のデータをすべて読み書きする速度(データ転送速度)も重要である。

平均待ち時間は回転数で決まる

 アクセス・タイムは,ヘッドを目的のトラックまで移動させる時間(シーク・タイム)と,そのトラック上で目的のセクターがヘッドに近づいてくるのを待つ時間(平均待ち時間)を加えたもので示している。

 最初に平均待ち時間の説明をしよう。回転するディスク上で目的のセクターがヘッドの位置に到着するのに,最大でディスク1回転の待ち時間がかかる。逆に,最小では直ちに到達して待ち時間なしのこともある。そこで,セクターへの到着時間は,ディスク半回転の時間を示す「平均待ち時間」で表している。

 平均待ち時間は,ディスクの回転数によって自動的に決まる。4500rpm(回転/分)で6.7ミリ秒,5400rpmで5.6ミリ秒,7200rpmで4.2ミリ秒,1万rpmで3ミリ秒,1万5000rpmで2ミリ秒となる。高速回転型のHDDほど待ち時間は短くなり,より速くデータにアクセスできる。

 ディスクの回転数は,使用目的(用途)によって異なる種類のものが存在する(図1)。一般に,回転数の高いものほど高機能であり,サーバーやワークステーション向けに用いられる。年々,高速回転型HDDの採用比率が高まってきているが,消費電力を抑えるために低速回転のHDDを採用することもある。

図1●3.5インチHDDのインタフェースと回転数,用途の関係
図1●3.5インチHDDのインタフェースと回転数,用途の関係