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日経SYSTEMS

[IT業界の弱者]つらい客先常駐 依頼は断れない

2009/03/18
日経SYSTEMS取材班
出典:日経SYSTEMS 2007年7月号  p.217
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 次は,ユーザー企業に運用担当者として常駐するケースである。システム・インテグレータに所属する藤原康宏さん(仮名)は,あるユーザー企業の会計システム構築プロジェクトに参加した後,そのシステムの運用担当者としてユーザー企業に常駐し,1人で作業に当たっていた。

 ある日,月次処理の準備をしていた藤原さんに,ユーザー企業の事業部長が声をかけた。「1時間後の経営会議に,会計データの資料を提出したい。作ってもらえないか」。飛び込みの作業依頼だった。依頼されたデータは帳票などには出力されておらず,データベースのデータをSQL文で参照して加工する必要がある。がんばれば1時間程度で資料を作れるが,その日は経理部署向けの月次処理を実行する日だった。月次処理を実行するには手作業の準備が必要で,事業部長の依頼を引き受けると,月次処理を決められた時間までに終えることができない。

 藤原さんは,月次処理の準備があるので今は手がいっぱいだと事業部長に説明し,依頼をやんわりと断った。だが事業部長は「経営会議で使うんだ。分かるよね」と迫ってくる。言葉にはしないものの,『こちらの依頼の方が優先順位は高いだろ』との圧力を感じた。逆らうことはできず,藤原さんは事業部長の依頼を優先させた。

「なんで後回しにするんだ」

 その影響で,経理向け月次処理の終了は予定よりも1時間遅延した。

 すぐさま経理の担当者が飛んできて,「なぜ処理が1時間も遅れたんだ」と,藤原さんを問い詰めた。「事業部長から飛び込みで作業を依頼され,それで(月次処理が)遅れました」。藤原さんがそう答えると,経理担当者は「なんで月次処理を後回しにするんだ。いったいどういう考えなんだ」と非難する。藤原さんは,「遅れて申し訳ありません」と言うしかなかった。

 しかし,藤原さんにしてみれば,事業部長の依頼を受けただけである。経理部署向けの月次処理と,(事業部長に依頼された)経営会議向け資料作成の,どちらの優先順位が高いのかを判断できる立場にいない。毎月実施している処理が遅れるわけにはいかないが,後から思い返しても,あのとき事業部長の依頼を断ることはできなかった。作業が重なった時点で誰かから非難されることは避けられないというのか。『不条理だ』。

 藤原さんは,このままでは同じことが繰り返されてしまうと考え,ユーザー企業に体制の変更をお願いした。作業依頼の窓口を一本化し,作業が重なったときはその窓口で優先順位を付けてもらうことにした。それ以来,飛び込み作業の優先順位に煩わされることはなくなった。

 IT現場で実際に起きていることを,立場的に弱者の視点で書いてきた。業界構造に問題があるとすれば,そのしわ寄せは弱者への不当な扱い(=プロジェクトの影)として現われると考えたからだ。この連載を通して,プロジェクトの影の部分をぜひ考えてみてほしい。

藤原 康宏さん(仮名)
藤原 康宏さん(仮名) 中堅システム・インテグレータに勤めるSE(34歳)。あるユーザー企業に常駐して運用作業に当たっていたとき,定例作業と飛び込みの依頼作業が重なった。後回しにした作業の依頼者から文句を言われる。作業窓口を一本化してもらうことで再発を防いだ

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