「小林さん,C言語でソフトを作ってみました」
「やったね,鶴橋さん。これを? ここへ・・・,数字を入れていくと・・・,なるほどISBNの末尾を計算してくれるのか。でも,これ・・・」
「ちょっと正直,イケてないですよね。真っ暗な中に字だけがただ並んでるし」
「いや,DOS窓は仕方ないだろうけどさ・・・」
「昔のコンピュータって,みんなこんなだったんでしょ?」
「会社に通販の部署ができた当初は,DOSのデータベースソフトで客注管理してけどね。入力はキーボードだけで,マウスなんかなかった」
「使うの,難しかったんじゃないですか? 仕事でなら私は無理だな。どんなOSでも,やっぱりGUIじゃなくちゃ」
「うーん。そうだ,そういえばちょうどこの本に,Windows開発当時のマイクロソフトの内部事情が書かれていたね」
「なんです? 新潮新書の『マイクロソフト戦記』,1月の新刊ですね。へー,昔って機種が違うと同じOSって使えなかったんですか」
「マイクロソフトに限らず,勃興期のソフト開発の経営は,けっこう行き当たりばったりな戦略で進められているのが読んでびっくりだね。出てくる人がみんな濃ゆそうで,その辺の良く言えば人間臭い,悪く言っちゃえば生ぐさい話が載ってる。コンピュータと言っても,作るのも使うのも,売るのも人間,ということかな」

「さて,今年最初の月のベストですか」
「まず最初に書名を並べてみようか。
1.システムはなぜダウンするのか(日経BP出版センター)
2.クラウド・コンピューティング(朝日新聞社)
3.ITロードマップ(東洋経済新報社)
4.合格への総まとめ 応用情報・高度午前共通知識対策
5.クラウド化する世界(翔泳社)
6.Amazon EC2/S3クラウド入門(秀和システム)
7.ITアーキテクトのためのシステム設計完全ガイド(日経BP出版センター)
8.これから情報・通信市場で何が起こるのか(東洋経済新報社)
9.ITパスポート(技術評論社)
10.応用情報技術者合格教本
以上,かな」
「全体に新刊の攻勢がすごいです。1位は日経BP社の『なぜ~のか』シリーズの最新版ですよね」
「この『システムはなぜダウンするのか』が新刊分として入ったのは1月下旬なのに,月間ベストで1位という快挙。技術評論社の『24時間365日サーバ/インフラを支える技術』もすごく売れたけど,こちらの方はシステムがダウンするその原因について目を向けているね」

「2位も1月の新刊。こうして見ると2位以下,クラウド関係の書籍が3件も入ってるんですね」
「『クラウド・コンピューティング』は新書という手ごろなサイズが受けたわけだけど,初登場2位とは予想してなかった。5位になった既刊書の『クラウド化する世界』だって,勢いは落ちてない。2月には,東洋経済新報社から『クラウドの衝撃』も発売されて,既にかなりの実売をあげているし,同じ新書サイズでインプレスから『クラウドコンピューティング入門』も出た。まだほかにも刊行予定はあるし,今いちばん期待のもてるジャンルだな」

「それともうひとつ,資格試験関係の書籍が入っていますね」
「4位,9位,10位か。基本よりも,応用情報技術者の方が売れてるんだな」
「あと,ITパスポート試験の関係もすごく出てますよ」
「ITパスポートというと,今年の春で最後になる初級システムアドミニストレータ試験が新しくなるやつか。いずれにしても試験は4月だから,売り上げのピークはこれからだ。がんばって商品を切らさないように気をつけていかないとね」
「そんな他人ごとみたいに言って。今でも試験関係の新刊はどんどん出てるし,どこにストック置けばいいんですか。補充の発注も考えてやってください」
「そんなこと言っても,出版社によってはいちばん売れる時期に品切れにしてくれるところもあるし,ある程度は抱えてないと。普通書籍は新刊発売後,少ししてからがいちばんよく売れるけれど,試験関係の書籍はぜんぜん違うからなあ」
「からなあって・・・」
「そうだ,鶴橋さん,ひとつ書籍の売り上げ予測ソフトってのを作ってよ。それを見ながら補充をかけていくってのはどう?」
「そんなことできたら,バイトなんかやってません!」
注:アルバイトの鶴橋さんは架空の人物です。