日立製作所 環境本部 主管技師
IEC 環境配慮設計WG 国際主査
市川 芳明

 EuP指令は「エネルギー使用製品に対する環境配慮設計要求事項設定のための枠組みを構築する指令」(DIRECTIVE 2005/32/EC)の略称であり,典型的な製品環境規制である。それと同時に,ライフサイクル思考に基づくという斬新さがあり,第1回で述べたIPP(Integrated Product Policy)の影響を最も色濃く受けた法律だと言える。また,環境配慮設計を義務化する世界で初めての法律であることから,エコデザイン指令とも呼ばれる。

対象製品を規定する3つの条件

 EuP指令の対象となる製品は,次の3つの条件により規定されている。

 まず,第2条(定義)では,「意図した働きをするためにエネルギー入力に依存する製品,またはエネルギーを生産,移動および測定するための製品あるいは,エネルギー入力に依存し,本指令で対象とするEuPへの組み込みが意図されるもので,最終ユーザーに個別パーツとして上市およびサービス供与され,その環境パフォーマンスが個別に評価できる部品を意味する」とある。すなわち,必ずしも最終製品だけではなく,部品も含まれ得ることに注意が必要である。

 次に,第1条3項で「人あるいは物の輸送手段」が除外される。さらに,第15条2項(実施措置の基準)において,具体的な対象製品の選定基準が示されている。以下にそれを示す。

(a) 欧州共同体内でかなりの量の,例示的には年間20万ユニット以上の販売量または取引量があること
(b) 欧州共同体内で著しい環境影響をもつこと
(c) 当該製品は過度の費用を伴わず,環境影響に関し著しい改善の可能性を示すものであること

 マクロに言えば,結局,RoHS指令に次いで,またもや電気電子製品が主要な対象になった。第16条には「暖房および温水機器,モーター,照明,家庭用電気製品,事務機器,民生用電子機器およびHVAC(暖房・換気・空調)システムなど」として,当面のターゲットが例示されている。もちろんこれらの他にも実施措置に特定される製品はIT機器やその部品を含めて今後続々と出てくるだろう。

CEマーキングの新たな適合条件に

 EuP指令の法的義務に関しては,二つの重要な特徴あるいは位置づけがある。

 一つは「ニューアプローチ」指令としての位置づけである。ニューアプローチとは,(EC域内での)商品の自由な流通を許容するため,ECの法規制と欧州規格団体との間に,明確な責任分担を導入するというものである。法規制はその製品が上市される際に満たすべき「本質的な要求事項」を定め(例えば,健康と安全の保全など),一方,欧州規格団体は,該当する指令の本質的な要求事項に関する遵法性を満たすための技術仕様を作成し,これを「整合規格」として発行する。行政側はその規格への適合をもってこの本質的な法的要求に適合していると見なすこととする。

 結果として,EUに輸出する製品で,このニューアプローチ指令の対象に指定されたものは,全て「適合宣言」を提示しなければならず,その適合宣言には該当する規格の番号が書かれることになる。適合製品にはよく知られた「CEマーキング」を添付することになり,EUでの販売が認められる。要するに,EuP指令はCEマーキングの新たな適合条件になったというわけである。

 もう一つの側面は「枠組み指令」という位置づけである。「枠組み指令」はその名の通り,具体的なことは定めていない。各製品に課される具体的な義務については,実施措置(IM:Implementing Measures)として後に定められる。本文に例示されている「暖房および温水機器,モーター,照明,家庭用電気製品,事務機器,民生用電子機器およびHVAC(暖房・換気・空調)システムなど」などの当面のターゲットは,先行した14の製品群(ロット)に反映されているが,この他にも実施措置に特定される製品を増やすことができるようになっている。