国際会計基準への対応で影響を受けるのは会計システムにとどまらない。基幹系全体への影響が避けられない。

 「会計システム以外に影響する項目がある」(ベリングポイント顧問の川野克典日本大学商学部准教授)ことも注意が必要だ()。

図●国際会計基準への対応が基幹系システムに与える影響の例
図●国際会計基準への対応が基幹系システムに与える影響の例
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 その代表例が「収益認識」である。日本では取引先が製品を検収する前、出荷した段階で売り上げ計上している企業が多い。いわゆる「出荷基準」による収益認識だ。

 システム面では、販売システムで出荷したデータを、会計システムでそのまま売り上げとして計上するといった処理をする。

 一方で国際会計基準は収益認識のタイミングに「検収基準」を採用している。出荷だけでは売り上げと認められず、取引先が検収したことを確認した時点で、初めて売り上げとして計上できる。

 販売管理システムの出荷情報を即、会計システムで売り上げとして計上しているシステムの場合、「期末の処理に特に注意が必要だ」と川野准教授は指摘する。

 3月期末決算の企業が3月31日に製品を出荷した場合、その日中に検収を確認して処理しなければ、期中に売り上げとして計上できない。

 こうした問題を防ぐために、検収書の確認後、即座に売上高を計上するように業務プロセスを変え、対応機能を販売管理システムに実装する必要がある。製品の出荷が多い企業の場合、省力化に向けて、検収通知の受信の自動化などの検討も視野に入ってくるだろう。検収通知をEDI(電子データ交換)化するといった対応だ。

 日本の会計基準にはなかった新たな処理が求められるケースもある。こうした場合は、システムを含めて、全く新しい仕組み作りが求められる。

 10年4月以降に始まる事業年度から適用になる項目の一つに「資産除去債務の計上」がある。固定資産を将来、撤去する際の費用を資産と負債に計上する処理を指す。

 日本の会計基準では、資産除去債務は元からなかった項目。固定資産が少ない企業なら手作業で済むかもしれない。だが固定資産を多く抱えている企業が正確に資産除去債務の金額を計算するためには、手作業やスプレッドシートでは限界があり、システム化が欠かせない場合も出てくる。