システムの対応が遅れると経営リスクに直結しかねない――。会計制度への対応はその典型例だ。いまその“真打”が日本企業に迫っている。

 2008年11月7日、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が「新システム稼働に伴う連結監査手続きの完了確認に慎重を期するため」として、2009年3月期第2四半期の決算発表を延期した。

 同社は08年7月1日にERP(統合基幹業務システム)パッケージを利用して基幹系システムを刷新したばかり。新システムの稼働後、初めて迎えるのが09年3月期第2四半期の決算だった。

 決算発表を延期した理由について、CTCの奥田陽一社長は「稼働後のシステムで初めて計上する数字ということで、当社も監査人も慎重な姿勢になった」と説明する。「システムは無事に稼働した」と奥田社長は強調。だが「新システムの入力作業に手間取ったり、新システムで計算した数値が正しいかどうかを確認したりする作業に手間取った」(奥田社長)のだ。

 CTCは当初の予定から6日遅れた08年11月13日に第2四半期の決算を発表。法定開示の期限である14日にギリギリ間に合った。

システムの変更が経営リスクに

 会計システムを中心とした基幹系システムの刷新が、経営リスクの一つになっている。CTCの例は、08年4月以降に始まる事業年度から適用が始まった「四半期開示制度」の影響を受けたもの。

 金融商品取引法では四半期ごとの財務情報を、監査人のレビューを受けたうえで、期末日から45日間以内に開示しなければならないと定めている。基幹系システムを構築した場合、社員がシステムの操作に慣れ、安定稼働に移行するための猶予はほとんどないということだ。

 CTCは一度、発表した決算日を延期するにとどまった。とはいえ、決算発表では証券会社のアナリストから、決算発表日が遅れた理由について「決算数値に問題があったのではないか」と相次いで質問が飛んだ。決算開示の遅延に対する投資家の目は厳しい。

 四半期開示だけではない。システム関連の対応の遅れが、経営リスクに直結する会計制度の変更が相次いでいる。四半期開示と同時期に適用が始まった日本版SOX法(J-SOX)対応が、システムの構築に影響を与えたり、システム部門の負担になったりしているのは周知の通りである。

 そして今、四半期開示、J-SOXに続いて、基幹系システムやシステム部門に大きな影響を与える“真打”ともいえる会計制度の変更が日本企業に迫っている。それが「国際会計基準(IFRS=International Financial Reporting Standards)」への対応だ()。

図●会計システムを中心とする基幹系システムを取り巻く環境が変化している
図●会計システムを中心とする基幹系システムを取り巻く環境が変化している
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