経産省やJISAはシステム開発プロジェクトで利用するモデル契約書を公表している。経産省もJISAも、多段階契約の考え方をモデル契約書に採用している点や、要件定義や外部設計などの上流フェーズでは準委任契約を、開発工程では請負契約を推奨している点は共通している。

 経産省のモデル契約書がITベンダーとユーザー企業の双方を対象としているのに対し、JISAはITベンダーだけを対象としている点が異なる。JISAのモデル契約は、1994年に策定した基本契約と2002年に追加した短期間で開発するWebシステム向けのモデル契約を、一本化したものである。以前のモデル契約を踏襲しつつ、経産省の第一版と契約条項を基本的に一致させている。

 経産省のモデル契約書には2種類ある。基幹業務システムなど、スクラッチ型で開発するシステムを対象とした「第一版」と、パッケージソフトやSaaSなどを利用するシステムを対象とする「追補版」である。

 第一版と追補版の最も大きな違いは、「ユーザー企業のITに関するスキルが豊富かどうか」にある。

 第一版は、ITに関する専門知識を持ち、ITベンダーと対等に交渉する力を持つユーザー企業を対象としている。追補版の対象は、ITについて詳しくないユーザー企業である。そのため、追補版には、個別契約の締結時に利用する重要事項説明書や、ユーザー企業が適正なITベンダーを選定するためのチェックリストといった第一版にはない文書が含まれている。

 いずれのモデル契約書もホームページで入手できる。経産省のモデル契約書のURLは、http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/index.htmlである。JISAのモデル契約書は、http://www.jisa.or.jp/legal/commerce.html#devからダウンロード可能だ。