JTB情報システムは2007年5月、経産省のモデル契約書第一版を参考に、JTBグループで利用する「システム開発標準契約書」を策定した(図A)。契約条項は全部で58条あり、総ページ数は25ページになる。「契約書で、お互いにとって良い要素も悪い要素もすべて出し合えるようにした。こうすることで初めて、本気でプロジェクトに臨める」と野々垣典男 執行役員グループIT推進室室長は語る。

図A●JTBグループが利用する「システム開発標準契約書」
図A●JTBグループが利用する「システム開発標準契約書」

 JTBグループのシステム開発標準契約書では、要件定義が変更になることもあり得る点や、変更になった場合の手順まで決めてある。「システム開発プロジェクトで問題が発生し得るトラブルや問題について、あらかじめ対処方法をまとめている。開発プロセスの手順書でもある」(野々垣執行役員)と言う。

 利用を開始して、1年半近くが経過したが、ITベンダーによっては、いまだに契約書をよく読まなかったり、ファイルにとじたりするだけの担当者がいるという。野々垣執行役員は、「まだまだ契約書はトラブルになったときだけ見直せばいいという意識が完全に消えてはいないITベンダーがいるのではないか」と指摘する。

 このままでは標準契約書を策定した意味がなくなる。今後はプロジェクト開始時に開催するキックオフ・ミーティングで、契約書の読み合わせをすることを検討しているという。「現状、全くトラブルがなく成功といえるプロジェクトは5割に達していない。これを最低でも7割に上げたい」と野々垣執行役員は意気込む。