国際会計基準を巡る動きは,時々刻々と変化している。改めて国際会計基準の概要と動向をまとめておこう。

 国際会計基準は、世界100カ国以上で採用している会計基準であり、「国際会計基準審議会(IASB)」が設定している会計基準の総称だ。IASBは現在、「国際財務報告基準」と呼ばれる会計基準を作成している。

 この国際財務報告基準に加え、IASBの前身の団体が作成した会計基準や国際財務報告基準の考え方を示した解釈指針などをまとめて、国際会計基準と呼ぶことが多い。

 英語表記では「International Financial Reporting Standards」となる。頭文字をとって「IFRS」と略すことが多く、「イファース」や「アイファース」と読むことが一般的だ。三つの文書をまとめたものであることから「IFRSs」と複数形で表現するケースもある。

 国際会計基準は、詳細な会計処理を示さない「原則主義」、資産の変動を重視する「貸借対照表重視」、個別企業よりも連結グループでの経営をみる「連結中心」といった特徴がある。詳細な会計処理を決め、損益計算書や企業単体の決算を重視する、今の日本の会計基準との差異は大きい()。

図●国際会計基準の特徴
図●国際会計基準の特徴
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 EU(欧州連合)諸国が中心になり、国際会計基準の採用は広がっている。現在、自国の会計基準を利用しているカナダや、韓国、インドといったアジアの諸国も国際会計基準を11年までに採用すると表明。国際会計基準を採用する国は順調に増えつつある。

日本以外の先進国が採用

 今年8月まで先進国で国際会計基準の採用を表明していないのが、日本と米国だった。だが米国が8月に国際会計基準を採用するという方針を決定。国際会計基準の採用にかかわる意見を表明していない先進国は、日本だけになった。

 国際会計基準の採用が世界各国で広がっている背景には、比較可能性を担保する目的がある。

 これまで会計基準は世界各国が個別に作成することが一般的なため、似ている勘定科目であっても会計基準ごとに定義が異なるケースがあった。そのため「同業種の日本企業と米国企業の財務諸表を比較する」といった場合、企業の財務内容を株主や投資家が正確に判断できない問題が浮上していた。

 日本は今、日本の会計基準を国際会計基準に近づけようと「収れん(コンバージェンス)」を進めている。11年6月30日までにコンバージェンスは終了する計画で、日本の会計基準が国際会計基準に近づくことになる。

 ただし、コンバージェンスはあくまで日本の会計基準をベースに、国際会計基準と差異が大きい部分を縮める考え方。コンバージェンスが終了しても、日本の会計基準と国際会計基準が全く同じになるわけではない。