遠藤 紘一
リコー 取締役副社長執行役員CSO兼全社構造改革担当

 私は小集団活動でよくテーマにされる「2S(整理・整頓)」や「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」活動が嫌いである。確かに作業現場をきれいな状態に保つことは大事なことだ。しかし現場リーダーには、ただ単に掃除を徹底すればそれでよしと考えてほしくない。汚れがついたり、ゴミが出ないような仕組みを考えることに知恵を使ってほしい。

処置と解決は異なる

 今回は、現場改革において「本質的な解決」とはどういうことかについてお話したい。

 私は、現場リーダーに「『処置』と『解決』を取り違えるな」という話を、折に触れてしている。

 まず例え話をしよう。家の中でお年寄りがつまずいてケガをした時に、手当てをして包帯をまいたりするのが「処置」。家をバリアフリーの構造にしたり、目が悪い人にもつまづきやすい場所が分かるようにしたり、そもそもつまづくような個所を無くしたりするのが「解決」である。すなわち、不具合に対してとりあえず対処するのは処置、不具合の原因を掘り下げて再発を無くすのが解決だ。

 本連載の第1回と第2回で紹介してきた「Σ-E(シグマ・イー)システム」の事例においてはこうだ。当初抱えていた悩みは、設計段階で採用した部品を量産時に部品メーカーから打ち切りにされてしまうことだった。「手際よく打ち切りにされそうな部品を買いだめしておく」「新しい部品を選び直して迅速に設計し直せるようにする」という活動をしたとすれば、「処置」にすぎなかった。実際に採った解決策が「打ち切りになる部品を設計段階で選ばなくて済むように、旬の部品情報を自分たちで収集してデータベースを構築する」ことだった。

 こう話せば、処置と解決の違いについてはお分かりいただけるだろう。しかし、現場ではQC活動にまじめに取り組んでいるように見えても、内容は処置ばかりだという場面にたびたび出くわす。水平展開・標準化(再発防止)、私が言う『解決』がきちんと行われていれば、同じような内容のテーマは無くなっていくはずである。もしあなたの周囲に、同じようなテーマに繰り返し取り組んでいるQC活動があるとすれば、それは処置ばかりを行っている可能性を疑うべきである。

 ただ、QCサークルに本質的な問題解決力を期待するのは、なかなか難しいのかなという印象も持っている。標準化された手順や行動をきちんと徹底しているかどうかという課題に取り組んでくれればそれでよいのではないか。