第6回と第7回は,自社で負担できるコストとの兼ね合いを考えながら判断すべき基準を,コスト勘案選定ポイントとして紹介していく。

電力も回線もコストになる

 データセンター事業者は,1ラック当たり平均でどのくらいの「電力」の供給が可能かを把握している。データセンター事業者にその数値を質問して,自社サーバーの消費電力の合計がそれを下回っているかどうかを確認しよう。一般にデータセンターは,「1ラック当たり4kVAまで提供可能で,月額10万円」など,電力を決めた上での固定額を示すことが多い。場所代に組み入れられた場合もある。この金額が許容範囲かどうかを確認する。

 しかし,契約した電力がそのまま実際の消費電力になることはない。そこで最近は,「ラックに消費電力を測定する装置を付けて,その結果を価格交渉に使う企業が増えている」(消費電力の測定装置を販売するラリタン・ジャパン セールス本部 シニア・ヴァイスプレジデント 荒野智氏)という。

 電力と同様にインフラとして必要になるのが「回線」である。これも,どのくらいの帯域の回線を利用できるか,その価格はいくらかを検討する。カカクコムの中島氏は,「月間7億件を超えるアクセスに耐えるには,広い帯域が必要になる。その回線のコストが一番安いところを探した」と語る。

 情報サイト「cafeglobe.com」を運営するカフェグローブ・ドット・コムも回線コストにこだわっている1社だ。同社の原洋介氏(メディアサービス部 システム制作課 システムエンジニア)は,「回線料金がデータ量に応じた従量制になっていることにこだわる」という。同社の場合,回線を流れるデータ量は日時によって大きく変動する。「回線料金を従量制にすることで,データ量に応じた回線コストにできる」(原氏)と話す。

災害対策用途では選定ポイントが変わる

 本記事で紹介している選定ポイントは,本番系システムをデータセンターに設置する場合を想定している。しかしデータセンターの利用目的には,災害対策用システムの設置というケースもある。その場合は,どのように選定ポイントの要件が変わるのか。

 まず,場所に対する考え方が逆になる。前澤化成工業は,災害対策用のデータセンターとして,自社オフィスや本番系のデータセンターから100km離れていることを要件としている。また,地震による同時被災を避ける観点から,本番系のデータセンター付近と同じ,あるいは影響関係にある活断層にあるデータセンターは候補から外している企業もある。

 サービス面では,「必要最小限のものに絞る顧客が多い」(ソフトバンクIDC 中山氏)。例えば,遠隔バックアップが可能な程度の最低限の帯域の回線にしたり,本番系なら採用する運用サービスを外したりといったことだ。