アッカ・ワイヤレスは,1月19日に社名を「ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)」に変更した。株式の100%を保有していたアッカ・ネットワークスが,その株式をすべてイグナイト・グループ傘下のAGSアドバイザリーに譲渡したことで,アッカ・ネットワークスとの資本関係がなくなったためである。ワイヤ・アンド・ワイヤレスは公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスの事業者として出発する方針である。

 公衆無線LANサービスの提供開始は,2009年4月を予定している。ユーザーはノート・パソコンを持つビジネスパーソンだけではなく,iPhone 3Gやプレイステーション・ポータブル(PSP),ニンテンドーDSといった無線LAN通信が可能な端末のユーザーを取り込んでいく考えだ。料金体系は月額定額や1日単位など,いくつかの種類を考えている。月額定額の場合,料金は携帯電話料金やモバイル通信料金を支払っているユーザーに負担にならない程度を目指している。

 ワイヤ・アンド・ワイヤレスの代表取締役社長を務める日比野雅夫氏は,「地に足が着いたサービスを提供できることと,新しいサービス提供ができることを両立させていく」という方針を掲げている。

 地に足が着いたサービスの展開に向け,基地局数の充実を図る。向こう3年で1万局の設置を予定している。NTT東西地域会社の公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」の基地局が約9000局であることと比べても,決して少ない数字ではない。ワイヤ・アンド・ワイヤレスは今後増資を予定しており,その資本を基地局設置の原資とする。当初のサービス提供エリアは東京都内を中心とした関東圏になる。

 公衆無線LANサービスの場合,サービス提供エリアの広さを強調することが多いが,同社の戦略はそれとは異なる。広さは追い求めず,空港や商業ビルといった建物と,バスや電車などの公共交通機関にこだわっている。空港からリムジンバスに乗り,オフィスまで帰る。こうした人の動線に公衆無線LANサービスを提供できるようにする考えだ。

 実際に同社は,昨年12月からリムジンバスを運行する東京空港交通や,タクシーを運行する京急交通,京急横浜自動車と協力し,車内での公衆無線LANサービスの実証実験を実施している。ただし,特定の建物や公共交通機関だけではサービス提供エリアが狭い可能性がある。その部分は,他の公衆無線LANサービス事業者と提携してカバーしていく考えだ。

 日比野社長がいう新しいサービスとしては,基地局を商業ビルや公共交通機関に設置する強みを生かしたものになる。その一つが第3世代移動通信(3G)サービス事業者との提携である。3G利用者が多くトラフィックが集中する場所で,一部のトラフィックを無線LAN側に分散させるといった利用方法を想定している。

 日比野氏は,「公衆無線LANサービスはユーザーが求めているサービスだと確信している。多くのユーザーに求めているサービスを提供するためにも,国内最大の公衆無線LANサービス事業者を目指す」と語った。