購買支援サイト「価格.com」を運営するカカクコムは,同社のサイトを構成するサーバー240台をデータセンターに設置している。同社がデータセンターを選定する際に意識したのが,「空調」の能力だった。「以前借りていたデータセンターは,自社のサーバーが急増したことで空調能力が限界に達し,引っ越しを余儀なくされた」(システムプラットフォーム部 マネージャー 中島善平氏)という苦い経験をしているからだ。

 自社のサーバーを冷やす能力があるかどうかを知るには,どうすればいいのか。データセンター事業者であるソフトバンクIDCの中山一郎氏(ビジネス開発本部 サービス&マーケティング部 部長)は,「1ラック当たり何Wの空調能力がありますかと聞けばいい。たいていのデータセンターはその数字を持っているので,教えてくれる」とアドバイスする。自社サーバーの消費電力をあらかじめ合計しておいて,データセンター事業者に提示する企業もあるという。中山氏は,「消費電力を合計しておくことに加え,その電力が定格電力なのか,実効電力なのかも知らせてほしい」と補足する。

空きスペースはあるか

 基本選定ポイントの最後に挙げるのは「空きスペース」だ。ラックやフロアに空きスペースがないと,サーバーの台数を増やそうとしても,設置できない場合がある。

 実際,空きスペースが足りない悩みを抱えているのが,先述の外為どっとコムである。同社の広瀬氏は「サーバー用ラックの設置場所がいくつか離れている上,別の階のスペースにも設置しているので,システム管理者が作業のたびに移動せねばならず,悩ましい」と打ち明ける。

 最初に借りたフロアで空きスペースがなくなったため,別の階のスペースを使い始めたが,同社のサーバーが急増し,近々その空きスペースもなくなりそうだという。空きスペースの重要性を改めて認識した同社では結局,「十分な空きスペースがあるデータセンターを新たに選定中」(広瀬氏)だ。

 同様に,十分な空きスペースがあるかどうかを選定ポイントとして重視したのが冒頭でも紹介した前澤化成工業である。同社の伊奈氏は「今後10年で10台サーバーが増加しても問題ないかをデータセンター事業者に確認した」と語る。

知っておいて損はない,意外な選定ポイント
 第1回で示した図2の選定ポイントのほかに,取材を通して得られた,知っておいて損はない,意外な選定ポイントを四つ紹介しよう。

 まず「荷物」。一時的な預かり場所がない,破損した場合の責任を取りたくないという理由で,サーバーなどの荷物を受け取らないデータセンターがある。その場合,ユーザーが現地まで荷物を運ばねばならない。また,サーバーの梱包資材のような「ゴミ」を引き取ってくれないデータセンターだと,ユーザーがゴミを持ち帰る必要がある。さらに敷地の狭いデータセンターだと,専用の「駐車スペース」がなく,荷物の運搬が不便になる場合がある。これら「荷物」「ゴミ」「駐車スペース」は,データセンターの資料だけでは分からない。事前に確認しておくとよいだろう。

 また,「RFP(提案依頼書)に対する返答時間」もチェックしておきたい。RFPの返事が遅い事業者は,緊急対応時の初動も遅い可能性があるという考え方である。