写真1●IHIエスキューブの豊洲データセンター
写真1●IHIエスキューブの豊洲データセンター
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 IHIエスキューブが東京都江東区の豊洲で運営するデータセンター「IHIエスキューブ豊洲データセンター」(写真1)の最大の特徴は,その統合運用サービスだ。

 インフラ構築グループで約90人,基幹システム開発・運用グループで約300人在籍する同社スタッフが総力を挙げて統合運用サービスを支える。スタッフの8割はITILファウンデーション資格を取得しており,ITILに準拠した形で,監視サービス,電話エスカーレション・サービス,バックアップ・サービス,オペレーション・サービスといった運用管理を行う。もちろん,顧客が独自に運用管理手法を有し手順書を整備していればそれに従うこともでき,逆に不備な点があれば整備に向けてサポートすることも可能だという。

先を見通した運用サポートを展開

 IHIエスキューブは,宇宙開発から産業機械まで手掛けるIHIグループにおいて,グループ内のシステム開発・運用を一手に担う情報処理サービス事業者である。

 同社がデータセンター事業を展開することになったのは,IHI本社ビルの新築がきっかけだ。同ビルにIHIグループの情報システムを集結させると,スペースに余裕があることが判明。ならば社外の情報システムを預かってビジネスを開始しようと,蓄積していたデータセンター運用のノウハウを生かし,ハウジング・サービスを開始した。2006年4月のことだ。

 もともとノウハウを持っていただけあって,運用に対する考え方は確かだ。こんなエピソードがある。

 ある顧客企業のシステムに新型ウイルスが蔓延し,エンドユーザーからは一刻も争う勢いでサーバーにパッチ・プログラムを適用することを求められた。しかし,そのパッチ・プログラムの有効性を危ぶんだ同社は,情報システム部門の責任者に判断を仰ぎ,あえてそのパッチ・プログラムの適用を控えた。案の定そのパッチ・プログラムにはバグがあり,適用したシステムに障害が発生したことが後日判明。エンドユーザーから感謝されたという。「我々が冷静さを保ち,決定権を持つ責任者と密接に連携を取ることで二次災害を防げた」とIHIエスキューブの山越一弘氏(システム技術事業部 副事業部長 豊洲データーセンター センター長)は振り返る。

設備・立地に自信あり

 設備面でも安心感がある。制震構造を持つ最新ビルに加え,ラックの下に免震装置を設置。この免震装置は,2008年に発生した宮城・岩手内陸地震の際も,震源地に近い場所で運営されていたデータセンター内のラックを守った実績がある。

 電気設備も強力だ。複数の局舎からの3相3線22KV3系統をスポット・ネットワークで受電している。自家発電設備は1500kVAを2機,UPSは3台(うち1台は予備機)備え,万一停電が発生しても24時間は電源供給を停止しない。

 江東区豊洲という立地条件も利便性に富む。有楽町から公共交通機関を乗り継げば徒歩でも30分以内で現地に到着でき,24時間利用可能な駐車場もビル内に備えている。埋め立て地ではあるが,東京都都市整備局の調査で地域危険度特性測定評価は「AAA」とされている。また,東京都港湾局の調査でも,液状化の発生は少ないと評価されている。

ワンモア・ポイント
 IHIエスキューブ豊洲データセンターを選ぶ顧客の多くが,理由を二つ挙げるという。一つ目は,IHI本社ビルにあるデータセンターだからという理由。雑居ビルではなく,建屋にIHIグループしか入居していないので,人の出入りが自然と制限されるのがいいらしい。二つ目の理由は,同じデータセンターでIHIグループの情報システムも運用している点。自社グループの運用もしているなら,それだけ運用管理は万全なはず,というわけだ。

基本情報
●名称:IHIエスキューブ豊洲データセンター
●場所:東京都江東区豊洲
●最寄り駅:東京メトロ有楽町線豊洲駅,ゆりかもめ豊洲駅
●料金:1ラック(標準電源設定)で18万円~

■変更履歴
「東京都都市整備局の調査で~液状化などの心配はない」としておりましたが,正しくは「東京都港湾局の調査によると,液状化の発生は少ないと評価されている」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/02/12 10:35]