ベータ版の一般公開に続き,早くも次のRC(製品候補:Release Candidate)版提供が話題になるなど,2009年に入ってからWindows 7は大きな注目を集めている(関連記事:Microsoft,「Windows 7」はベータ2版なしでリリース候補版へ「Windows 7」のベータ版は終了,早ければ今年半ばにリリース)。年内に正式な製品出荷が始まるとすれば,次に気になるのはエディションや価格といったWindows 7の具体的な製品としての計画だろう。残念ながら,これらに関して危惧される話がいろいろと聞こえてくるので検証してみよう。

Take1:Microsoftは「Windows 7」での過度なエディション展開をやめよ

 米Microsoftは,次期クライアントOS「Windows 7」の製品構成に関する計画をいったん認めたにも関わらず,その後突如として口をつぐんだ。同社は,1つの製品ブランドに数多くのバージョンを用意する「スキュー(SKU:Stock Keeping Unit)」方式を,Windows 7でも採用することを計画している。特にローエンド・ハードウエアで処理速度の遅いネットブック向けとなるバージョンの話題を避けている。

 同社のこうした態度は,単一製品で複数エディションを展開する「Windows Vista」譲りの戦略を(編集部注:Vistaでは「Home Basic」「Home Premium」「Business」「Enterprise」「Ultimate」という5つのエディションを用意している),新しいWindows 7でやめるどころか拡大するのでは,という疑いを広め,技術業界をパニックに陥らせた。筆者は今回も慌てなかったが,今度ばかりは安心していられないかもしれない。そこで,同社に製品系列を考える上での基本的なポイントを指摘しておきたい。

 第一は,現在は世界的な景気後退の真っ最中であり,回復の兆しは見えないということである。このような状況で,Windowsの上位バージョンを複数設定しようと考えているのなら,目を覚ますべきだ。

 第二に,Windows 7に必要なバージョンは「Home」「Business」「Ultimate」の3種類だけということだ。これ以上はいらない(Homeは新興市場の要求に応えるため。Businessは店舗販売とボリューム・ライセンス販売用)。

 第三に,すっかり忘れられているようだが,Windows 7はあくまでマイナー・アップグレード版であり,Windows Vistaの進化版OSに過ぎない。非常に小さなアップグレードであるため,Windows Vistaからの移行は無料で,非Windows Vistaユーザー向け価格も大幅に割り引きされる可能性がある。確かにWindows 7が抜群のOSであることは分かった。ただし,大きな変化はなく,実際のところ「Windows XP SP2」のときと同じような位置付けである。必要で重要なアップデートではあるが,無料で提供されるべきものだ。

 同社のために書いておく。無料提供が正しい道であり,愚かな選択はやめた方がよい。今ならまだ引き返せる。

Take2:Microsoft,「IE 8」の機能を「Firefox」向けにも提供

 読者は,至るところで発揮されるMicrosoftの競争心を気に入るはずだ。同社は次期Webブラウザ「Internet Explorer(IE)8」に3つほど大きな新機能を搭載する。だが,どれも競争力の直接的な強化策ではない。しかも,新機能の相当部分を最大のライバルに提供してしまうのだ。しかも無料で。

 同社は2008年1月の最終週,IEのライバルWebブラウザである「Mozilla Firefox」向けのアドオン・ソフトウエアをリリースしたのだ。同アドオンをFirefoxに導入し,Microsoftの検索サービス「Live Search」を利用する設定にしておくと,検索ボックスにキーワード候補が自動表示されるようになる。

 FirefoxでLive Searchを使っているユーザーは,全世界に17人くらいなものだろう。次は何が登場するだろうか。Firefox用「Windows Live Toolbar」か。それともFirefox高速化ソフトウエアか。楽しみだ。