システム開発プロジェクトを成功に導くには、ベンダーとどのような契約を結んでいるかも大きなカギを握る。ユーザー企業自身でプロジェクトを主導しようと考えているか。それとも、ほとんどをベンダー任せと考えているのか。契約の実態から、ユーザー企業とベンダーとの関係が浮かび上がってくる。
今回の調査では、プロジェクトのフェーズを大きく「要件定義」「システム企画」「システム設計」「開発」「テスト・移行」の5段階に分け、それぞれについてベンダーとの間でどのような契約をしているか聞いた。契約形態は「請負契約」「準委任契約」「派遣契約」「契約していない」の四つから選択する形式を採った。
要件定義で「準委任」は2割に満たない
図1はプロジェクトの工程別にみた契約形態である。いずれの工程においても、多かった契約形態は「請負契約」。「契約していない」「準委任契約」がこれに続く。「派遣契約」は1~2%程度だった。
プロジェクトの上流工程に当たる要件定義とシステム企画をみると、どちらも最も多かったのは請負契約である。それぞれ55.1%、55.2%と過半数を占めた。これに対し、準委任契約は17.5%と15.2%である。
経済産業省の「モデル取引・契約書」などでは、要件定義までとテスト工程以降は準委任契約、開発工程は請負契約が望ましいとしている。半数以上が請負契約で依頼しているというのは、本来はユーザー企業が主導権を握るべき上流工程でもベンダーに頼りがちという現状の表れと言えるだろう。
一方、「契約していない」は要件定義が25.9%、システム企画が27.9%だった。ベンダーに依存しがちなユーザー企業が多い中で、ベンダーに依頼せず自社で要件定義やシステム企画を進めようと考える企業も4分の1近くは存在するということだ。
システム設計、開発の工程に入ると請負契約の比率が高まる。システム設計で74.3%、開発で78.1%が請負契約だった。この結果は当然と言えよう。このフェーズでは「契約していない」は13.2%、11.6%まで減る。開発まで自前で進めようと考えるユーザー機企業は、現状では1割程度にとどまっているわけだ。準委任契約はそれぞれ11.5%、8.6%だった。
テスト・移行でも請負契約が多いが、67.3%と設計・開発に比べるとわずかだが減っている。代わりに「契約していない」が15.4%に増えている。
6割の企業が要件定義を「ベンダーと分担している」
調査では契約形態に関連して、ベンダーとの役割分担について聞いた。契約形態と同様に要件定義、システム企画、システム設計、開発、テスト・移行の5フェーズでそれぞれ、「社内で担当している」「ベンダーと分担している」「ベンダーにまかせている」の三つから選択してもらった(図2)。
要件定義で最も多かったのは「ベンダーと分担している」で、60.1%を占めた。次に多かったのは「社内で担当している」で、33.7%の企業がこう回答した。
要件定義を「社内で担当している」企業は、このフェーズではベンダーと契約していないとみられる。実際、こう回答した企業はすべて、要件定義段階での契約形態について「契約していない」と回答していた。この段階で「契約していない」106社のうち、無回答を除く全84社が要件定義を「社内で担当している」と回答したのである。ほかのフェーズについても同様の結果だった。
請負契約が多いシステム設計や開発では、やはり「ベンダーにまかせている」割合が高くなる。システム設計で51.0%、システム開発で68.2%がこう回答した。
テスト・移行になると、ベンダーにまかせている企業は17.5%まで減る。68.6%が「ベンダーと分担している」と答えた。