パソコン向けのモバイル・データ通信サービスが英国や米国で普及し始めている。その背景にはHSDPA(high speed downlink packet access)による下り伝送速度の高速化や端末購入時の割り引きなどを工夫した事業者の料金プランの充実などがある。固定ブロードバンドの代替サービスにもなりそうだ。
(日経コミュニケーション編集部)
英米の携帯電話事業者によるパソコン向けデータ通信サービスの提供が本格化してきた。特に,料金プランや対応端末の提供,データ利用量の上限設定などで工夫が見られ,利用者も増えている。
英米のデータ通信サービスは,日本の同種のサービスと比べて,次の点が異なっている。(1)データ利用量の上限を設定したプランが主流であり「無制限」のプランはあまり見られないこと,(2)利用上限を超過した場合の取り扱いは通信事業者によって異なっていること──といった点である。
英国は月4200円で10Gバイト
英国では,HSDPA対応のUSB端末を使ったパソコン向けデータ通信サービスの提供が活発になっている。サービス提供事業者としては,T-モバイルUKと3(スリー)UKが積極的。両社は複数のプランを提供しており,USB端末も契約条件によって価格を値引きしている(表1)。ハイエンド向けでは「月30ポンド(約4200円)で上限10Gバイト」が相場となっている。
米国でも,英国同様にパソコン向けデータ通信サービスの提供が本格化している。料金プランのラインアップ(表2)は各社とも多くはない。ベライゾン・ワイヤレスやAT&Tモビリティは「月60ドル(約5640円)で上限は5Gバイト」がハイエンド向けプランの相場となっている。T-モバイルUSAは,データ通信容量の上限を設けていない。
もっとも,英国でのデータ通信サービスはHSDPA対応が標準的だが,米国でHSDPAに対応するのはAT&Tモビリティだけ。ベライゾン・ワイヤレスとスプリント・ネクステルはcdma2000 1xEV-DOでサービスを提供する。
T-モバイルUSAは他の3社と異なり,第2世代携帯電話であるGSMの拡張仕様「EDGE」(enhanced data rates for GSM evolution)を使ってサービスを展開する。他事業者と比べて伝送速度が劣る点は否めないが,データ利用量の上限や価格設定でその不利を補っていると考えられる。
各社ともにパソコンに接続するデータ通信用機器には,USB接続型もしくはPCカード型を用意している。