介護器具販売・レンタルのフランスベッド メディカルサービスは2008年1月,16台のラックマウント型サーバーで稼働する基幹システムを,仮想化ソフト「VMware ESX Server」を使って4台のCPUブレードを搭載するブレードサーバーに移行した。製品選びで重視したのは,最大メモリー容量と最大LANポート数。導入したのは搭載メモリーが64Gバイト,ポート数が8と多い日本ヒューレット・パッカード(HP)の「ProLiant BL460c」だった。

 なぜそんなにたくさんのメモリーやポートが必要なのか。製品選定に当たった同社の森勝博氏(業務部 システム課 課長代理)は「仮想化ソフトで複数のゲストOSを起動させればその数だけメモリーを使う。さらにVMwareではCPUブレード間のアプリケーション転送用のポート,専用の管理サーバー機との接続用ポートなど独自のポートが必要になる」と説明する。

 同社の場合,物理サーバー1台でアプリケーション用に2ポート,バックアップ用に2ポート,VMotion(稼働中のアプリケーションを別の物理サーバーに移動する機能)用に2ポート,そして管理用に1ポートと,合計7ポートを使う構成である。

 デルの布谷恒和氏(エンタープライズ・マーケティング本部 ブランド マネージャー)は「サーバー仮想化が目的なら,本来はポート数やメモリー搭載数に余裕があるタワー型やラックマウント型を選ぶべき」と指摘する。それでも省電力や省スペースのためにブレードサーバーを導入するなら「割高にはなるが,ポートやメモリーをたくさん搭載した一部のモデルを選ぶ必要がある」(布谷氏)。

 表1に,仮想化に適した主なCPUブレードを掲載した。ゲストOSを3~4程度稼働させるならメモリーは20Gバイト以上,ポートは6ポート以上が目安となる。2008年に入ってCPUブレードのメモリー搭載数やポート数は増加傾向にある。いずれも広がりを見せる仮想化に対応するためで,例えばデルでは2008年9月,筐体(きょうたい)のサイズをハーフハイト(幅1.6インチ)からフルハイト(同3.2インチ)に変更し,メモリー容量やポート数を大幅に拡張したモデルを発表。日立製作所も11月,小型タイプの「BS320サーバーブレード」の最大メモリー容量を,16Gバイトから32Gバイトへと倍増させた。

表1●仮想化に適した主なCPUブレード
複数のゲストOSを同時に稼働させる仮想化環境では,リソース不足を解消するためにメモリー容量やLANポート数にゆとりのある製品を選択したい。サーバー仮想化機能を搭載したモデルを選べば,あらかじめリソースが確保されている場合が多い
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表1●仮想化に適した主なCPUブレード<br>複数のゲストOSを同時に稼働させる仮想化環境では,リソース不足を解消するためにメモリー容量やLANポート数にゆとりのある製品を選択したい。サーバー仮想化機能を搭載したモデルを選べば,あらかじめリソースが確保されている場合が多い

信頼性重視しハード搭載型を選ぶ

 大阪ガスは2007年7月以降,日立製作所のハイエンド・モデル「BS1000サーバーブレード」を順次導入している。選択の決め手は「Virtage(バタージュ)」と呼ぶ独自のサーバー仮想化機能が,ハードウエアとして搭載されていることだった。「サーバー統合の効果を引き出すには仮想化は必須。だが止められない基幹システムでは,ソフトウエアによる仮想化では不安があった」と,情報通信部 インフラ技術チームの原田昌治氏は打ち明ける。

 これまでサーバー仮想化機能をハードウエアとして持つブレードサーバーは日立製作所やイージェネラなど一部に限られた。それが2008年に入ると「VMware ESXi」や「Citrix XenServer」といった仮想化ソフトをUSBメモリーやSDカードなどに搭載し,ブレード内に組み込む製品が登場。こうしたモデルは仮想化ソフトのインストール作業が不要なほか,ディスクにアクセスしないので起動時間が速い利点がある。既にNEC,デル,日本IBM,日本HPの4社が2008年に出荷を開始しており,2009年には富士通も投入する計画だ。これらの製品は,メモリーやポート数が多いのも特徴である。