1. 短期間で移行できるよう,既存コンテンツを極力手直しせずにCMSに登録
2. CMSの制約により,画面が崩れてしまう問題が3度発生
3. 問題の原因を突き止め,ツールの内製もしくは人手による作業で対処

 ゲームソフトの開発やゲームセンターの運営を手掛けるタイトーは,コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)の導入において,Webページが意図通りには表示されない問題に3度直面した。その結果,1カ月で完了すると見込んだ導入プロジェクトが2カ月延びてしまった。

 一般に,CMSを新たに導入する際は,既存コンテンツの移行が課題になりがちである。既存コンテンツを要素に分解し,CMSの枠組みに合わせて再構成する必要があるからだ。既存コンテンツが少量なら大きな手間ではないが,タイトーが持つ既存コンテンツは4000ページもあった。人手で移行したのでは,時間とコストがかかりすぎる。

 そこで,既存コンテンツをほぼそのままCMSに登録できる移行ツールが用意された,CMSパッケージを選択した。しかし,コンテンツの移行作業が始まってから,既存コンテンツの改修が不可欠であることが判明し,プロジェクトが遅延する結果となった。以下では,タイトーがどのような問題に直面し,それをどう解決していったのか記していく。

短期間で導入したい

 タイトーがCMSを導入した背景には,三つの課題があった(図1)。一つは,ゲームセンターの店長や業務用ゲームの開発者といったコンテンツの更新担当者ごとに,HTMLに対する理解度に大きな差があり,誰でもコンテンツを更新できるという状況にはなかったこと。

図1●タイトーのWebサイト更新業務で生じていた課題と対策
図1●タイトーのWebサイト更新業務で生じていた課題と対策
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 二つ目は,広報宣伝部のWebサイト担当者の作業負荷が高かったこと。この担当者は,更新されたコンテンツの内容を確認した上で,コンテンツを公開用サーバーに転送する。プロジェクトの責任者である藤原隆氏(ON!AIR事業本部 システムインテグレーション技術部 部長)は,「ゲームセンターだけでも200店舗あり,各店舗がほぼ毎日更新する。さらに家庭用や業務用ゲームのコンテンツの更新もある。更新量が膨大であり,また公開のための転送作業が自動化されていないので,作業負荷が高かった」と説明する。

 三つ目はコンテンツを作成,更新するのが500人ほどと大人数なので,デザインの統一が図れていないこと。CMSを導入していないWebサイトではよくあることだが,タイトーも例外ではなかった。「Webサイトは企業の顔。デザインの統一は大事なことだと考えた」(藤原氏)。

 これら三つの課題を克服する,すなわち「誰でもコンテンツを更新できるようにする」「コンテンツ公開作業を簡単にする」「デザインの統一を図る」ためにCMSの導入を決めた。短期間で導入できるようパッケージ製品を探し,「NOREN」(アシストが販売)に決めた。選択時に重視した要件は,既存コンテンツをそのまま手間なくCMSに登録できる移行ツールが存在する,更新担当者が500人に達するのでライセンス料がユーザー・アカウント数によって跳ね上がらない,更新担当者が他の人のコンテンツを勝手に修正できない,などである。