NHKは2009年2月2日,海外向けサービス「NHKワールド」の3本柱の一つである「NHKワールドTV」の新編成による本格的なサービスを2009年2月2日に始めた。これまでも外国人向けのテレビ国際放送という位置づけだったが,新編成を期に日本初の24時間完全英語放送となる。スタートから1週間は,特別番組として世界を相手に活躍する日本人をゲストに迎えた独自インタビュー番組を連日放送する。これは民放キー局の協力も得て制作するもので,ゲストとして利根川進氏や五嶋みどり氏が登場する。

 そもそもNHKワールドの目的は大きく二つある。(1)外国に対し我が国の現状や重要な政策などを正しく伝えて,国際社会の日本に対する理解を深めて国際交流の促進を図ること,(2)海外で起きている政情不安や自然災害時に,その地域で滞在する日本人へ安全情報を伝える,である。この目的のためNHKは,NHKワールドTVの加えて,短波などを使った様々な言語による国際音声放送である「NHKワールド・ラジオ日本」,日本語を中心とする有料の番組配信「NHKワールド・プレミアム」を提供してきた。

 これまでNHKは,海外在住の日本人向けにニュースや大相撲,大河ドラマなどを日本語で番組配信するNHKワールド・プレミアムの視聴者を拡大することに注力してきた。北米における「JNG」(提供はJAPAN NETWORK GROUP, Inc.)や,欧州における「JSTV」(提供はJapan Satellite TV (Europe) Ltd.)などにおいて,民放の番組とのコラボレーションで提供される総合編成日本語放送チャンネルの核にもなっていた。

 NHKワールドTVは,これらとは一線を画するサービスである。原則として,24時間365日毎正時に英語によるニュースを放送する。さらに,日本およびアジアの視点に立った豊富でかつ多様な英語番組で編成する。

日本から情報発信の尖兵

写真1 メイン・スタジオ「CU-777」。スタイリッシュなデザインとなっており,照明等の省エネも徹底している
写真1 メイン・スタジオ「CU-777」
スタイリッシュなデザインとなっており,照明等の省エネも徹底している
[画像のクリックで拡大表示]

 世界に目を向けると様々な英語による国際放送が盛んになっている。代表例が「BBC」や「CNN」という国際ニュース・メディアであり,世界各地で視聴されている。アジアからも中国の国営テレビ局「CCTV」(中国中央電視台)が英語などの各国語放送を展開しており,さらに韓国の「アリランTV」(Arirang TV & Radio)など各国の英語ニュース・チャンネルがポビュラーになりつつある。イスラム文化視点でニュースを解説していく「アルジャジーラ」や,ロシアのプレゼンスを英語放送で高めることを目的とした「ロシアトゥデー」などの新しい国際ニュース・チャンネルの勃興も相次いでいる。

 このように,全ての番組を英語で行うというスタイルは今や世界的潮流である。NHKワールドTVはこの流れに沿うもので,日本から情報発信の尖兵という重要な役割を担うことになる。

 こうした重要な役割を担うNHKワールドTVの新編成によるサービスの本格化に向けてNHKは,20年ぶりに放送センター内の一つの階全体のフロアを改装して新スタジオを設置した。スタジオは二つある。「CU-777」は広さが約125m2あり,ニュースショーのメイン・スタジオとして活用する(写真1)。特筆すべきは,照明にLEDスポットライトを採用したことである。環境に配慮したNHKの姿勢が伺える。光源にLEDを利用したこのスポットライトは,同じ明るさの照明に比べて消費電力は約1/5になるという。スタジオ内には3台のHDTVカメラが配置されている。ラウンド型が特徴的なテーブルでは,キャスターや解説者が縦横無尽に動ける仕様となっている。

 もう一つのスタジオが「CU-778」である。広さは約90m2。CU-777と同様の機能があり,バックアップスタジオの役割も兼ねている。