東京から電車で1時間。茅ヶ崎駅近くのインサイトテクノロジーはデータベース管理製品を開発する小さなソフト会社だが,その技術力は日本オラクルからも一目置かれる。設立メンバーだった元オラクル社員の技術力が,キーボードも叩けなかった新入社員や異業種からの転職組といった“素人たち”に受け継がれている。
技術者集団を率いるのは,小幡一郎氏(取締役 CTO)。日本オラクルでデータベースの開発に携わった経験を持つ小幡氏は,データベースの内側を知り尽くした技術者である。
「インサイトでは私は何も教えていない。勝手に育っている」。
こうは言うものの,教え子たちの言葉を聞けば,小幡氏独特の伝承スタイルが見えてくる。小幡氏は,学ぶ場を作り,テーマを与え,答えを考えさせる。頭を抱えて聞きに来ても答えは教えず,時には怒鳴り,時には優しくアドバイスを与えるだけである。
朝練から1日がスタート
インサイトの1日は“朝練”と呼ばれる勉強会から始まる(写真1)。開発メンバーの一人が講師となり,その日のテーマを議論する。参加は自由。開始は午前8時。数人でスタートし,徐々に人が増え,終わる頃には20~30人が出席している。長いときは午前中いっぱいを費やすこともあるという。

社員が増えた今でこそ持ち回りで講師役を務めているが,数人で会社を設立した当時は小幡氏がもっぱら講師だった。Oracleの中身を座学スタイルで徹底的に教え込み,実機でとことん検証させた。小幡氏が日本オラクルの出身だけに,その内容はマニュアル類や市販の教本よりはるかに深かった。
「本業の製品開発とは別に,勤務時間の7割を座学や検証に費やしていた」。当時の教え子の一人 成田裕亮氏(営業本部 課長)はこう振り返る。成田氏はメインフレーム上のアプリケーション開発を手掛けるITベンダーからの転職組。DB2を触ったことがあったが,Oracleは初心者だった。
ここで学んだことがメルマガ「おら!オラ!Oracle -どっぷり検証生活-」に発展する。当時開発部にいた成田氏が「座学と検証で得たノウハウを何らかの形で共有したい」と提案して始めたものだ(図1)。このメルマガ,名前もふざけているが,検証内容もふざけている。ただ,浮き上がってくるノウハウは本物だった。
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