米IP Devices代表
岸本 善一

 データセンターの改修を検討する際のポイントは,いかに経費をかけずにエネルギー効率を上げるかである。現時点で組める予算によって,採用できる技術や手法が変わってくる。

 EPA(米国環境保護庁)のレポート,シリコンバレーのコンソーシアムSVLG (Silicon Valley Leadership)の実証実験の報告,その他の資料でよく報告されている手法を統合し,体系的にまとめたのが表1である。

 ここでIT機器とは,サーバーを含むコンピューティングに使用されるものを指す。一方,サポート機器とは,UPS(無停電電源装置)など電力搬送や冷却に使用されるものを指す。

 体系化された手法にアルファベットのAからFを割り当て,参照できるようにした。例えばAでは,IT機器のエネルギー効率を上げるための代表的な手法を挙げている。ここでは特に,現段階で比較的簡単に導入できたり,実装しやすい手法・技術に限定して取り上げた。

IT機器 効率化 A
・使用されていない機器を停止
・高エネルギー効率の機器と交換(電力管理を含む)
・仮想化でサーバーなどの機器を統合
運用 B
・負荷を監視して使用されていない機器を停止。停止された機器に対する冷却も停止
サポート
機器
効率化 電力 C
・ 高効率のUPS
・高効率の変圧器
冷却 D
・ 冷却ファンとポンプのスピード制御(一定速と変速)
・水冷方式の採用
運用 電力 E
・負荷の状況に応じて負荷を振り分け,必要のない機器を停止。停止された機器に対する冷却も停止
冷却 F
・Cold/Hot aisle
・Containment
・Air/Water Economizer
・データセンター内の温度を上げる
・ラックや床の隙間を埋める
・2重床の下の気流を妨げるものを撤去
表1●データセンターのエネルギー効率を向上させる主な方法
 現段階で比較的簡単に導入できたり,実装しやすい手法・技術に限定して取り上げた。全てを網羅しているわけではない。

 一般によく報告される方法はAとFに示されるもの──IT機器のエネルギー効率化の手法と,サーバー室の冷却に関する手法だ。これはどうしてだろうか。どちらも,IT部門の裁量で実施することができ,あまりファシリティ(施設管理)部門からの支援や専門知識を必要としないからかもしれない。

 領域CとDは完全にファシリティの分野で,同部門の協力なしには実施できない。領域BとEは先進的な企業では実装され始めているが,まだ一般的とはいえない。