一度は関係が切れそうになったが、新人営業の日々の活動が実り、再び声がかかった。新規顧客を開拓する絶好の機会だ。ただし競合は、顧客と20年以上付き合っている大手SIerだった。

 「今回は見送りたい」。大崎電気工業の情報システムセンターで副課長を務める吉田隆昭は、ソフトクリエイトの営業担当者である長野剛にこう告げた。長野がつかんだ商談は、いったん幕引きとなった。2007年7月上旬のことだ。

 大崎電気は2007年4月から、ワークフローシステムの再構築の検討を始めた。日本IBMの「Lotus Notes」で作った従来システムは、操作性やレスポンスが低下していたからである。

 2007年4~6月にかけて、吉田はソフトクリエイトなどSIer4社が提供していたワークフロー専用ソフトを比較・検証した。だが、いずれの製品もコストと機能の折り合いがつかなかったのである。

いったん断ったSIerに声をかける

 ワークフロー専用ソフトをあきらめた吉田は、グループウエアが備えるワークフロー機能を活用することにした。吉田が目を付けたのは、サイボウズの「ガルーン2」である。大崎電気の研究開発部門で、サイボウズのグループウエア「Office 6」を導入済みだったことが大きい。

 Office 6は小規模ユーザー向け、ガルーン2は大規模ユーザー向けという違いはあるが、インタフェースや機能はほぼ同じ。「Office 6からガルーン2に移行しても、利用部門に大した負担はかからないだろう」と吉田は考えた。

 2007年7月~8月にかけて、吉田はサイボウズ主催のセミナーに参加したり、デモンストレーションを見たりした。「ワークフロー機能も十分使えそうだ」との手応えをつかみ、ガルーン2の採用を決めた。9月に入ると、ガルーン2を使ったシステム構築の委託先を決めるため、SIerの選定に着手した。

 吉田はサイボウズ製品のパートナー企業の一覧表に、これより前にワークフロー専用ソフトを提案していたソフトクリエイトを見つける。ソフトクリエイトの長野は、ワークフロー専用ソフトの採用を見送ることを告げられた後も、吉田に何度か連絡を入れていた。

 営業熱心だったこともあり、吉田はソフトクリエイトに声をかける。大崎電気は10月上旬、合計5社のSIerに提案を依頼した()。

表●大崎電気工業がソフトクリエイトに発注するまでの経緯
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表●大崎電気工業がソフトクリエイトに発注するまでの経緯