富士通エフ・アイ・ピーは,アウトソーシング,Web,SIという3事業を柱に,顧客の情報システムのライフサイクル全般をサポートしている。同社が提供するソリューションは,様々な分野における技術と経験をベースにし,ビジネスプロセス変革や事業継続,新ビジネスの創造,そして先端技術を活用したソリューションなどと幅広い。これらの多様なソリューションを支えているのが,人材の厚みと全国14カ所に展開するデータセンター,豊富な経験と実績,最先端の技術である。

富士通エフ・アイ・ピー 代表取締役社長 伊与田 悠 氏
富士通エフ・アイ・ピー 代表取締役社長 伊与田 悠 氏

 「アウトソーシング,Web,SI――この3つの事業によって,情報システムの企画から設計,構築,運用,さらに提案というライフサイクルをカバーすることができます」と,富士通エフ・アイ・ピー社長の伊与田悠氏は自社の強みを説明する。
 
 3つの事業エリアにおけるノウハウを基盤に,同社は多様なビジネスソリューションを実現してきた。以下はその代表的な事例の数々である。






ビジネスプロセスの変革と事業継続ソリューション

 まず,“ビジネスプロセスの変革”を実現した例として伊与田氏が取り上げたのは,製薬ソリューション「パーシヴ/PostMaシリーズ」である。

 「薬の副作用や市販後の使用成績に関する情報は,厚生労働省に報告しなければなりません。従来,医師が調査票を記述する一方で,製薬会社は医師から回収した調査票の情報を入力するなど,煩雑な面が多々ありました。そこで,医療機関と製薬会社,厚労省をネットワークでつなぎ,情報の流れをスムーズにさせたのがパーシヴ/PostMaシリーズです」(伊与田氏)。これにより,二重入力を解消し,データ品質確保の効率は大幅に向上したという。

 自治体向けのコールセンターBPO( Business Process Outsourcing )も,変革の一例である。これまで電話での受け付けや伝票作成など人手に頼る部分が多かった例に,大型ゴミの収集受付業務がある。このプロセスをシステム化してBPOセンターに移管することで,自治体担当者は作業から解放されて,中核業務に集中できる。

 富士通エフ・アイ・ピーは,全国に14カ所のデータセンターを保有しており,その堅牢なファシリティー,冗長化された信頼性の高いシステム基盤を活用して事業継続ソリューションも提供している。

 伊与田氏は「当社の事業継続ソリューションでは,本番系とバックアップ系のシステムでデータを同期させるだけでなく,両方で業務処理を行うこともできます。それにより,災害時に本番系がダメージを受けても,すぐにバックアップ系で重要業務をスタートさせることができます」と力説する。

 事業継続ソリューションには,緊急地震速報を活用したサービスもある。これは速報受信後に,設備制御システムと連動して自動的に初期対応を行うというもので,エレベーターを最寄り階に停止させる,ボイラーを停止させる,といった安全対策を自動的に起動させることを可能にした。

 事業継続につながる,環境ソリューションも用意している。その1つが,エネルギーや化学物質の使用状況,廃棄物の量などを可視化する「SLIMOFFICE」である。2008年5月に公布された改正省エネ法では,エネルギー使用量の定期報告義務の対象となる範囲が拡大されたが,この法改正にも対応している。

新ビジネスの創造宇宙開発プロジェクトにも参画

 さらに,新ビジネスの創造をサポートするソリューションもある。百貨店ギフトカードに金額をチャージして相手に送り,受け取った側が商品購入時に使えるという仕組みがその一例。残高管理などのシステムは,同社のデータセンターで運用するASPサービスで提供する。ちなみに,日本百貨店協会は2011年をめどにギフトカードでの売上1000億円を目指すとしており,それに対応できる柔軟なシステムを求めていたという。

 宇宙や気象など最先端技術分野でも,富士通エフ・アイ・ピーは大きな役割を果たしている。例えば,気象庁などから得た気象データを,テレビ局とその系列各局に配信するシステムがある。伊与田氏は「公共性が高く,安全・安心が求められる分野で,当社のデータセンターや画像作成に関する技術が活用されています」と話す。

3つの柱
3つの柱
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 同社は,2009年初頭に打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」プロジェクトに参画し,温室効果ガスの全球濃度分布の作成や炭素吸収・排出量の推定を行うデータ処理システムの開発を行ってきた。

 国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に成層圏の微量分子分布データの作成システムを提供し,月周回衛星「かぐや」には衛星の姿勢などに関するデータをやり取りする制御システムの構築に関わったという。富士通エフ・アイ・ピーは,JAXA(宇宙航空研究開発機構)や国立環境研究所をはじめ多くの研究機関の業務を通じ,こうした衛星リモートセンシングなどの分野におけるシステム活用のノウハウを蓄積してきたという。

 「当社グループの様々なソリューションを支えているのは,連結で4000人を超える人材の厚みと全国14カ所のデータセンター,そして豊富な経験と実績,最先端技術分野での知見です。それらはいまも進化しています。例えば,これからはエネルギー消費を大幅に抑えたグリーン・データセンターを開設する予定です」と伊与田氏。高速プリンタを活用したプリンティング・コールセンターなど専用のBPOセンターを稼働させるなど,新しい試みにもチャレンジしている。

 「ITの持つ大きな可能性は,まだ十分に引き出されているとは言えません。そのパワーをいかに活用してビジネスの価値を高めるか。それは私たちベンダー側の使命であるとともに,お客様にとっても非常に大きなテーマだと考えています」(伊与田氏)。そのために富士通エフ・アイ・ピーは,人材の能力開発やデータセンターなどの設備強化,技術力のレベルアップに地道に取り組んでいる。