経済状況の悪化にともない,2009年のIT投資は大幅に削減されるのではないかと思われます。ITやWebサイトの位置付けは,かなり微妙な状況になるのではないかと思っています。そんな中で何を考えるべきでしょうか。結論から言えば,「原点回帰」だと思います。本質的に向き合う課題に対して,上昇気流が見えたときにその機を逃さず,その風に乗る「地力」を見つめ直すこと。Webデザインについて言えば,それは「ユーザーとの対話」を意味するでしょう。どう真摯に向き合うか,ITを活用しつつ。まさに原点とも言えるこの課題に,制作側も取り組むべき時代なのだと思わされています。そこから考えた今年やるべきことを書かせていただきます。

Webサイトとは無くても大丈夫な「看板」だったのか

 「様々な事柄を切り捨ててでも」という,なりふり構わぬ企業建て直し策の報道を見ながら,Webサイト開発という分野への恐ろしい程の寒気団を予感しています。人材にまで手をつけてしまっている状況では,広告塔としてWebを見る向きの方には,真っ先に予算削減をすべき分野に見えるかもしれません。単なる広報活動の一環として見る方にとっても,同様でしょう。他にお金をかけるべきものがある,と。

 人と人との対話で考えて,Webが単なる「名詞」であるのなら,経済状況によって,印刷する数や持ち歩く数を考えることはあるでしょう。けれど,私には「握手する右手」こそがWebの果たしている「機能」だと思っています(Web屋の身として言うのは偏った見方だとは思いますが)。

 初めての方と挨拶をして握手する。日本の習慣にはなっていないものの,もはや抵抗感も無い所作です。握る手の力,交わされる言葉と視線。それらが,今後の「お付き合い」に何らかの影響を与えます。こちらから望んで挨拶をする場合も,相手から望まれて握手する場合もあります。そして,どちらの場合にも,その一期一会的な場面はそれなりに意味や重みを持ちます。

 Webサイトは,そんな立ち位置を占めつつあると言っても過言ではないでしょう。社名を聴いた瞬間,商品名を目にした瞬間,目の前に「検索窓」があれば,興味と好奇心に従って,キーを打つ人は多いでしょう。「どんな会社なのだろう」。その場でなくても,思い出したときにそうする人はもっと多く,更に友人とmailやBlogで反芻されるので,思い出されるチャンスは増えていきます。

 また,ビジネスでコンタクトしようと思う先に,何も調べずに行く方も稀でしょう。Webサイトで読まれるものは,沿革やIR情報だけではありません。情報の整理の仕方,つまり「接し方」が見られています。訪れる者=「握手しようと手を差し出した人」に対して,イライラさせないか,迷わせないか。どのような対応をしているのか自体が評価されるという,シビアな対話は実はすでに定着しているのだと思われます。

 そして,この「握手する右手」は,Webサイトという形で半自動化されるものの,「運用」という血脈をもって活性化され,単なる自動販売機や置きっ放しの看板とは根本的に異なる機能を持ちます。更に,一度動き出したなら,見る側からももっと「上」を期待され,少なくとも常に「現状」を映し出す鏡の役割が当たり前とされ,立ち止まることが許されない状況になるものです。企業が生きている鼓動は,「運用」によって脈々と伝えられるべきで,Webサイトが静止するのは,その企業活動が止まることを意味すると受け止められるでしょう。この感覚は,人々が検索等や「続きはWebで」CMを通して,そのWebサイトを訪れるほどに強まる傾向にあると思われます。