顧客と毎週実施した勉強会は、盛り上がった。プリセールスは順調。受注は目前と思われた。ところが顧客はコンペを実施するという。これまでの努力は水の泡となるのか。
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「間もなくRFP(提案依頼書)を渡すので、コンペに参加していただきたい」。セガの情報システム部長である松田雅幸に、ユーフィットのコンサルティングビジネス部のコンサルタントである入山秀樹は、こう言われた。セガとの定例ミーティングを終えた2007年5月末のことである。
ユーザー企業に声を掛けてもらったのだ。普通なら喜ぶべきだが、入山はショックを隠せなかった。
ユーフィットの入山はセガの松田を、2007年4月から週1~3回のペースで訪問。新システムに関する議論を進めていた。
「正式に受注したわけではないが、この調子ならシステム構築を任せてもらえるだろう」。入山はこう踏んでいたのである。
だが、現実は厳しかった。「コンペなどせずに、当社に仕事を任せてくれると思っていたのだが、甘かったようだ。だが乗りかかった船だ。必ず受注する」。入山は気を引き締めた。
大手企業のSOA案件に燃える
ユーフィットの入山が臨んだのは、セガの請求・支払い業務向けワークフローシステムの構築案件である。セガの松田は2007年3月から、このシステムの検討を開始していた。狙いは、システムの保守効率を高めたり、システム運用費を削減したりすること。従来のワークフローシステムは、新機能を一つ追加するのに3カ月かかることもあった。
松田は新システムを構築するに当たって、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を実現しようと考えていた。「将来に備え、ビジネス変化に柔軟に対応できるITインフラを整備する必要がある」との思いからだ。
SOAに基づいて新システムを構築するための手段として、松田は「BPEL(ビジネス・プロセス実行言語)」に興味を持っていた。
「BPELを使って実際にワークフローシステムを開発できるのか」「保守効率や運用費の点で、どれだけ成果が上がるのか」。これらを探るため、松田は2007年4月、それまで付き合いのあった日本IBMと大手ソフトウエアメーカーのA社に相談した(表)。
松田はIBMとA社にこう告げた。「SOAの分野に力を入れているSIerがあれば、紹介してください」。IBMは、SOA事業の分野で協業していることもあり、ユーフィットをセガに紹介することにした。
「大手ユーザー企業でのSOAシステム構築事例を作れるかもしれない。是が非でも取りたい」。こう考えたユーフィットは、セガに情報提供することに決めた。