NECグループで通信拠点の建設事業を中心に事業領域を拡大してきたNECネッツエスアイでは,同社の得意とする通信工事,ネットワークインテグレーション,サポートサービス,アウトソーシングサービスを組み合わせた独自のトータルオフィスソリューションの提供に注力している。企業力強化のために同社が自ら取り組んだ「オフィス改革の成果」を,ユーザーの競争力向上のためのサービスとして提供していくという。

NECネッツエスアイ 代表取締役 執行役員社長 山本 正彦 氏
NECネッツエスアイ 代表取締役 執行役員社長 山本 正彦 氏

 「企業優位と企業価値の源泉は“社員力”です。厳しい事業環境にあっても,社員力を強化するための継続的投資は企業が生き残るために必要なのです」とNECネッツエスアイの山本正彦氏は強調する。

 具体的に山本氏が提案するのが,オフィス改革で社員力を引き出す方法だ。「社員の個性とチーム力を生かす自由で活発な活動を支援する『場』の提供と,社員が意識しなくても内部統制・セキュリティ・環境対策につながる仕組みを作ることでCSR(企業の社会的責任)に取り組む,という両面から企業力の強化を進めていくべきです」と山本氏は語る。

 同社はこうした信念のもと,自らオフィス改革を実践し,課題解決に取り組んでいるという。山本氏は「当社の課題である成長性を伸ばすには,営業力と提案力の強化が必要です。そこでは,お客様のための時間をいかに増やすかがテーマになります」と指摘する。顧客への対応活動を強化するために同社は,「コラボレーション改革」「機動力改革」「マネジメント改革」の3つのオフィス改革に取り組んでいる。

コラボレーション,機動力,マネジメント改革を実践

 「コラボレーション改革」の特徴は,個人やチームが集中して業務に取り組める執務エリアと,思いついたときにすぐにミーティングができるオープンなコラボレーションエリアの設定にある。なかでも特徴的なのがコラボレーションエリア。思いついたとき,すぐにミーティングができる組織を越えた社員交流の場としてのスペースが用意され,そこではICTと融合した“見える会議”が展開される。

 「ミーティングルーム間にしきりを設けずプロジェクターを自由に動かせるようにして,会議テーブルやガラス面など自由な場所に投影しながら議論を進めることができます。これにより,その画面を見てメンバー以外の人が途中から議論に参加することもできます」と山本氏。会議が見える状態を作り出すことでコラボレーションを促し,スピーディーに結論を出すことができるようになっていると説明する。

 2つ目のオフィス改革である「機動力改革」は,同社の得意とするモバイルツールとサテライトオフィスを組み合わせて活用するものだ。営業マンは本社に戻る必要がなくなり,効率もアップする。また,サテライトオフィスにはシンクライアントが用意され,セキュリティも確保される。

 3つ目は,こうした機動力を損なわないための「マネジメント改革」。社員が外で活動していても自動的に情報が集まる仕組みとしてSFA(Sales Force Automation: 営業支援システム)を導入し,重要な情報を共有するためのメッセージボードとしてデジタルサイネージを設置している。山本氏は,「最も重要なのは,マネージャーがマネジメントに必要な情報を自ら歩いて収集することです」と指摘する。部下を呼んで“報連相(ホウレンソウ)”を引き出すのではなく,情報を入手してその場で指示を与えることで社員力が強化される。

 また,同社のオフィスでは省エネ対策のためにペーパーレス会議や仮想化によるサーバー集約,冷却サーバーラック,照明のLED化を進めるとともに,省エネの状況を大画面に提示して省エネの見える化も図っている。「省エネの原点は,費やしているエネルギー量を知ることですから」と山本氏は語る。

 さらに,フロアのオープン化とともに実施しているのがセキュリティの強化だ。3つのセキュリティレベルを設定してゾーンセキュリティを実施している。「共用エリアでは低いセキュリティを設定し,機密情報エリアでは指紋認証を含めた高レベルのセキュリティを取り入れています」(山本氏)。ICカード型社員証システムや社員証を利用したセキュアプリントを組み合わせることで,効果的な運用を実現している。

ICTの導入と運用管理
ICTの導入と運用管理
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 同社は,これと同じ環境を「お客様の課題解決の場所」として「Empowered Offi ce Center」というショールームに再現し,デモと提案を行っている。「単なるショールームではなく,お客様と課題を共有し,実際に新しいオフィス環境を体験していただく場として準備しました」と山本氏はその役割を語る。

実践を通してノウハウを蓄積しICTを活用したサービスを提供

 「オフィス改革の鍵は,情報の共有,コラボレーション,そしてマネジメントです。それを実現する手段がスマートフォン,携帯電話,モバイルPCであり,この3つを利用して環境を構築しました」と山本氏。同社のオフィスを支えるユビキタス基盤を解説するとともに,「さらに運用をデータセンターに集約することで効率化が図れ,省エネ効果も期待できます」と集中管理のメリットを語る。

 実際にオフィス改革の効果として,顧客への訪問回数は1.6倍に増加。一方,稼働時間は月に16時間減り,社内業務は10%削減されたという。「トータルのパフォーマンスは1人当たり10%から15%向上しました。当然,業績にも貢献しています」と山本氏は成果を強調する。

 「社内では“活人オフィス”と呼んでいますが,働く場の変化は働く人の意識と行動を自然に変化させるのです」と山本氏。オフィス革命が意識や行動の変化を促進し,企業イメージの向上や社外とのリレーション強化,機能性の向上と法令遵守にも結びつくと話す。

 同社では,こうした自社の取り組みをベースに,オフィス改革のノウハウの提供と,それを支えるICT基盤の構築,運用支援といったサービスを提供していく意向だ。山本氏は,「今年は,エンジニアにとって効果的なオフィスのあり方を検証しています。企業力アップのための新しいオフィス作りといった切り口を中心に,今後も当社の提供するソリューションにご注目ください」と述べ,講演を締めくくった。