新規開発を凍結すればおのずと既存システムに手を加えながら使い続けることになる。保守開発作業を外部に委託しているときは、この外注費も抑えたい。

 かといって一方的な値引き要請は品質と士気の低下を招く恐れもあるので避けたいところ。お互いに「Win-Win」の関係を築けるように交渉を進めるのがよいだろう。

図●保守費用の削減分はユーザーとベンダーで分け合って「Win-Win」に
図●保守費用の削減分はユーザーとベンダーで分け合って「Win-Win」に

 お互いで合意したコスト削減目標が達成できたら、コストカット分の一部を外注先に還元する取り決めを結ぶとよい。「1年後に画面修正にかかる工数を20%削減する」といった生産性の向上目標を立てて取り組み、結果を精査する。

 保守作業は「エンジニアの単価×工数」で料金が決まる準委任契約または派遣契約で結ぶことが多い。このため単に生産性の向上を要請しても、外注先はモチベーションが上がらない。

 金融業のシステム部門長は「ベンダーにとってのコストメリットを強調すると保守費用を削減しやすい」と証言する。例えばユーザーが手戻りを控えるように要件定義の精度を上げたり、ベンダーが開発技術を向上させたりすることで、これまで5人月かかっていた保守作業を4人月に合理化できたとする。その場合は、この金融業はベンダーに4.5人月分の料金を支払う。

 さらに一定期間ごとに保守費用の内訳を見直す。工数を最大2割、コストを1割削減できると見込んでいる。浮いた費用は新規開発や別システムの保守に充当する。