基幹系システムを動かすインフラは自前で用意するのが当たり前。だが常識を捨て去れば、インフラの運用費や維持費を大きく削減できる可能性がある。

 京葉ガスは2009年1月、日本IBMが提供するITインフラの期間貸しサービス「Applications on Demand(AoD)」の利用を始める。SAP製ERPパッケージを使って構築した会計・購買・在庫管理などのアプリケーションを、自前のサーバー9台から移行する。2008年11月に移行作業を始めた。

 IBMは米国にあるデータセンタ ーで京葉ガスの専用サーバー3台と他社との共用サーバー数台を運用する。スケールメリットを出して、運用コストを下げる。米国のほかインドやオーストラリアの開発拠点の技術者が連携して低コストで24時間の運用・サポート体制を築く。本誌の推定だと京葉ガスは年間の維持コストを3~4割カットできる見込みだ。

図●京葉ガスはIBMのインフラ期間貸しを使って運用コストを3割減
図●京葉ガスはIBMのインフラ期間貸しを使って運用コストを3割減
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 インフラの期間貸しサービスは「PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)」と呼ばれる新しいサービス分野。IBM以外のベンダーも続々と提供を開始している。

 NECは2008年3月に「RIACUBE」の名称で始めた。ハードやOS、ミドルウエアをセットで期間貸しする。ユーザー企業はインフラの設計・構築費用を「約3割減らせる」と同社は試算する。インフラを運用する手間を省ける利点も大きい。

 稼働率やデータ復旧時間といったサービスレベルに合わせて料金が変わる。Linuxサーバー上でデータベース管理ソフトなどを動作させる場合、稼働率99.95%の「アドバンスド」コースは月額91万1000円、同99.5%の「スタンダード」コースは月額38万9000円だ。同99%の「ベーシック」コースの料金は非公開だが、アドバンスドの3分の1となる約30万円になるとみられる。