パナソニックの大坪社長(左)と三洋の佐野社長
パナソニックの大坪社長(左)と三洋の佐野社長
写真/中原敬太

 パナソニックが三洋電機を買収することを正式に発表した。過半の株式を取得して子会社化を目指す。注目点は、電機のトップ企業が太陽電池と燃料電池の両方を保持し、それらのハイブリッド化を進めることだ。

 11月7日夜、パナソニックの大坪文雄社長と三洋電機の佐野精一郎社長が会見に臨んだ。「両社の環境・エネルギーの技術を合わせれば、世界の人々に望ましい事業展開ができる」。三洋の魅力として、大坪社長が真っ先に挙げたのが、三洋電機の持つ太陽電池と二次電池事業だった。

 さらに、両社の技術を生かした具体的な新商品を問われた大坪社長は、「燃料電池と太陽電池のハイブリッド化が考えられる」と語った。

 強力な販売力を持つパナソニックが太陽電池に参入すれば、まず影響を受けるのは他の太陽電池メーカー。現在、京セラ製を採用しているパナソニック電工やパナホームが、いずれ三洋製に切り替えることは十分に考えられる。三菱電機の太陽電池担当者は、「パナソニックが太陽電池に本腰を入れれば、大変な脅威」と早くも警戒する。

 しかし、その影響を最も恐れているのは電力会社かもしれない。それを暗示しているのが、大坪社長の「ハイブリッド化」発言だ。これは、太陽電池と燃料電池の双方を備えた家庭用エネルギーシステムを意味する。

新日石もハイブリッドに意欲

パナソニックの家庭用燃料電池コージェネレーション
三洋電機の家庭用太陽電池
パナソニックの家庭用燃料電池コージェネレーション(左)と三洋電機の家庭用太陽電池(右)。大坪社長は両システムのハイブリッド化を目指す

 国内の住宅用太陽電池は、オール電化のメニューの1つとして普及が進んでいる。電力会社のオール電化向け料金体系と太陽電池を組み合わせると、光熱費の削減効果がより多く得られるからだ。

 オール電化の場合、給湯はヒートポンプ給湯機で賄う。一方、家庭用燃料電池システムはコージェネレーション(熱電併給)なので、電気と湯が得られる。つまり、燃料電池とオール電化は両立しないのだ。

 家庭用燃料電池システムは、2009年度から量産が始まる。パナソニックは社長直轄プロジェクトとして並々ならぬ力の入れようだ。大坪社長が会見で触れた「ハイブリッド」の商品化も急ぐとみられる。

 実は、積水ハウスは2008年4月に「CO2オフ住宅」を商品化し、ハイブリッド化を実現した。新日本石油も灯油を使った燃料電池システムとのハイブリッド化を目指している。特に同社は、燃料電池と太陽電池の双方を自社グループで生産することを目指しており、ハイブリッド化を成長戦略と位置づける。

 自然エネルギーを主体とした社会を想定した場合、太陽電池と燃料電池は理想的な組み合わせとの見方もある。燃料電池は水素から水と電気を作るが、逆に水と電気から水素も作れる。太陽電池による電気を水素にしてため、必要な時に燃料電池で発電するシステムも可能だ。ホンダは未来ビジョンとしてこうしたエネルギーシステムを提唱している。

 パナソニックの三洋買収がこうした未来型システムを模索する契機になるかもしれない。それは電力会社にとっては耳障りな話だ。