ネットワークを通じてソフトウエアの機能をサービスとして提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が注目されている。米グーグルや米アマゾン・ドット・コムなどのベンダーが「クラウドコンピューティング」に取り組んでいるが、これもインターネットを通じてコンピュータ資源をサービスとして使えるようにするものであり、SaaSと親和性が高い。
SaaSの前身として1990年代末に始まったASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)がある。名前の通り、アプリケーションをサービスとして提供する。SaaSはASPよりもカスタマイズが容易だったり、サーバー資源をユーザーが共有する形態だったりという違いがあるが、本質はASPと同じであり、ASPが時代に合わせて進化していった形がSaaSであると言える。
SaaS/ASPの注目度は高いが、実際に使っているユーザーはまだまだ少なく、どこにどれだけ効果があるのかはっきりしない面が多い。そこで、日経マーケット・アクセスがSaaS/ASPの利用状況を先進ユーザーに調査し、『SaaS/ASP利用実態調査2008』として発行した。ここから、主な結果を紹介する。
コミュニケーション系が最多
図1に現在SaaS/ASPを利用している回答者の利用サービスの種類を示す。サービスの種類は大きく基幹業務系(図1の「会計、人事・給与」から「特定業種向け」まで)と非定型業務系(図1の「モバイルサイト構築」から「その他」まで)に分けられるが、おおむね半々だった。

SaaSの代表的ベンダーである米セールスフォース・ドットコムは、基幹業務系でSFA・営業系サービスとCRM・顧客関連のサービスを提供している。基幹業務系の中で同社の利用は目立ったが(表)、全体のなかでこれら2分野が突出して多いわけではない。一番ユーザーが多かったのは電子メールやSNS、文書管理などのサービスで、31.5%を占めた。
サービスを利用しているユーザー数で見ると、基幹業務系よりも非定型業務系の方が、大規模な利用事例が多く、基幹業務系が平均990人であるのに対し、非定型業務系は1470人(図2)。約1.5倍である。非定型業務の方はメールなど全社員が使うアプリケーションが多く、基幹業務は部署や役職など、利用者を制限する場合が多いからだろう。