SaaS/ASP採用の最大の動機がコスト面にあることは、これまで見てきた通りである。そこで、以下では回答者が実際にかけているコストを分析する。
まず、初期コストは全体の平均が300万円弱(図11)。アプリケーション種別に見ると基幹業務系では約400万円、非定型業務系では約200万円かかっている。基幹業務では100万円前後かかっているユーザーと1000万円を超えるユーザーが多く、非定型業務では5000円未満から1000万円超まで幅広く分布している。
また、1アカウント当たりの年間コストは全体が約1万6000円(図12)。これも基幹業務系が高く、その違いは初期コストより大きい。非定型業務系が7000円程度で済んでいるのに対し、基幹業務系では2万8000円。4倍かかっている。さらに非定型業務系では価格帯が安いほど多くの回答があったのに対して、基幹業務系では 5000円、1万円程度に回答が比較的多く集まり、5万円程度や10万円を超えるという回答もかなりあった。
それでは、実際にトータルコストはどれだけ変わっただろうか。ユーザーの実感としてどれだけ増えているか、あるいは減っているかを尋ねた。その結果トータルコストには、サービスを利用する従業員数が大きく関係することが判明した(図13)。
基幹業務系でも非定型業務系でも利用者が499人以下の場合、トータルコストが50%以上上昇したという回答が10%を超えている。特に、基幹業務系ではコストが増えた回答者が減った回答者よりも多く、平均すると10.0%上昇している。非定型業務系では平均1.0%コスト削減と、ほとんどコストメリットは出ていない。
一方、500人以上の利用者がいる場合、基幹業務では6.6%、非定型業務では15.8%と明らかにコスト効果が表れている。SaaS/ASPは中堅・中小企業に向くと言われているが、コスト面で見る限り、利用人数が多いほどメリットが大きくなる。