第2回では、仕事のやりがいや給与満足度、年収の高さとやりがいの関係について報告した。今回は、学校教育や教育・研修についての調査結果を見ていこう。

 経済や社会生活におけるITインフラの重要度が高まっていることそして中国やインドなど海外のITエンジニアが高く評価されていることなどが相まって、ITエンジニア教育の重要性が盛んに叫ばれている。

 実際、大学をはじめとした教育機関では、産業界の支援を得て、実践を重視したITエンジニア教育の取り組みが始まっている。そこで、学校教育に対する感想や企業における教育・研修の実態を調査した。

 まず、就職前に受けた学校教育についての感想を聞いたところ、4割から5割強がポジティブに回答した(図1)。「かなり役に立っている」という回答はそう多くはないものの、「ある程度役に立っている」とした回答は3割から5割。一般には「学校教育など社会では役に立たない」と言われるケースが多いことから考えると、「意外に高い」数値ではないだろうか。

図1●就職前に受けた学校教育(大学、高校、専門学校など)に対する感想
図1●就職前に受けた学校教育(大学、高校、専門学校など)に対する感想
[画像のクリックで拡大表示]

 次に、教育とスキルレベルの関連性を調べるため、回答者の最終学歴とスキルレベルの関係を分析した(図2)。本調査を見る限り、高等教育を受けた経験がスキルレベルの向上に有利に働くかどうかはあまり関係なさそうだ。例えば中学・高等学校卒と大学卒(その他)を比べると、エントリレベル、ミドルレベル、ハイレベルそれぞれのポイント差は1ポイント以下。情報/工学系の課程で学んだかどうかも、大きくは関係ないといえそうだ。大学卒(情報/工学系)と大学卒(その他)とのポイント差は2ポイント以下にとどまる。ただし専門学校/短大/高専卒については、情報/工学系とその他とで、エントリレベルについて8.6ポイントの差がついた。

図2●最終学歴別に見た、スキルレベルの分布
図2●最終学歴別に見た、スキルレベルの分布
[画像のクリックで拡大表示]

実践こそが自らを鍛える

 このデータは「実践こそが自らを鍛える」という通説を証明するかのようである。ただ、情報/工学系の大学でITエンジニア教育に携わっている人々には、不本意な結果かもしれない。

 「実践が一番」とはいえ、適切な機会に受ける教育・研修が、本人に大きな気付きをもたらすことは間違いない。そこで本調査では「会社で1年間に受ける教育・研修の日数」を聞いた。

 結果は「5日未満」が多数派だった(図3)。日数をスキルレベルごとに見ると、これから本格的に仕事に携わる未経験レベルが突出して多い。だがこれは当然のこと。実践と学びのバランスが求められそうなレベル1からレベル3では、7割が5日未満と回答した。教育・研修は「長ければいい」というものではないが、拡充の必要性が議論になりそうなデータである。

図3●スキルレベル別に見た、会社で1年間に受ける教育・研修の日数
図3●スキルレベル別に見た、会社で1年間に受ける教育・研修の日数
[画像のクリックで拡大表示]