
米国のオバマ新大統領は、石油・石炭を重視していたブッシュ政権と比較すると、再生可能エネルギーや省エネなどのクリーンエネルギーの推進といった温暖化対策に積極的な姿勢を示している。
オバマ政権は当面、当然ながら経済対策・金融問題対策に全力を注ぐことになるだろう。これに続く優先課題の一つが、エネルギー問題になるとみられている。米国民の生活に直結するガソリン価格も一時の約半分まで下がっており、政策の優先順位も落ちるだろうという見方もある。だが、エネルギー自給、経済対策としてのエネルギー政策の観点からは重要課題の一つであることに変わりはない。
オバマ次期大統領のエネルギー・地球環境アドバイザーの一人も「オバマはエネルギー政策を優先分野と考えており、原油価格が一時的に下落したからといって考え方に変更はない」と選挙後に話している。
それでは一体どのようなエネルギー政策が進められるのか。
ブッシュ政権では、石油や石炭など伝統的エネルギー分野を重視するとともに、原子力も積極的に推進していた。これに対してオバマ氏率いる次期政権の大きな方向性は、再生可能エネルギーや省エネといったクリーンエネルギーを今まで以上に重視。原子力は比較的淡々と、石油産業には厳しい態度で臨むのではないかと考えられている。ブッシュ政権と異なり、環境問題にも積極的に取り組むとみられる。
10年間で1500億ドルを投資
オバマ次期大統領は選挙期間中にエネルギー分野の公約「ニュー・エナジー・フォー・アメリカ」を発表した。ここには次のような施策が並ぶ。
まず、環境問題に対しては、2020年までに温暖化ガス排出量を1990年レベルに抑え、2050年までに80%削減するキャップ・アンド・トレード制度を導入する。米国がリーダーシップを確保することも提唱した。現在の経済状況を踏まえると、社会のコスト負担につながる環境対策を直ちに進めるのは難しいのではないかという向きもある。しかし、オバマ次期大統領は大統領選後の演説で環境問題に取り組むと語っており、今後の動向が要注目の分野である。
次に雇用促進策として、プラグインハイブリッド車と再生可能エネルギーの商業化、省エネ関連などに10年間で1500億ドルを投資し、500万人の雇用を創出すると打ち上げている。
雇用促進につながるエネルギー対策とともに、エネルギー分野で最優先で取り組むのではないかと考えられているのが、自動車分野の対策だ。例えば、 2015年までにプラグインハイブリッド車の100万台導入、自動車の燃費基準を年間4%引き上げ、自動車産業界への税額控除と低利融資、次世代バイオ燃料の開発といった省エネ・低炭素化のメニューがずらりと並んでいる。
米自動車大手ビッグスリーは未曽有の経営危機のさなかにあり、政府や議会で救済の是非や対策の中身が活発に議論されている。政府が私企業を救済するのは一筋縄ではいかないが、エネルギー問題解決のために支援するというストーリーは納得しやすく無理が少ない。その意味でも、この分野も足が速そうだ。
