パソコン以外にもニーズを広げる上で,ノンPCユーザーに向けたサービスを開拓することはフレッツ光の今後の売れ行きを左右する。だがNTT東西には,ノンPCユーザー開拓に向けて解決しなくてはならない障害もある。現状のグループ各社の事業領域の重複や特定のグループ会社に対する営業連携などに対する規制がその一つだ(図1)。
例えばテレビ向け映像配信サービス。現状では,NTT東西が資本関係を持つ「フレッツ・テレビ」と,NTTコミュニケーションズ・グループが提供するIP方式の「ひかりTV」が並立している。このため店頭での契約の際に,「ユーザーに理解してもらえず,結局契約に至らないケースもある」(量販店関係者)という。
携帯電話については規制がじゃまになる。ノンPC分野では,誰もが使っている携帯電話も何とか取り込みたいところ。実際にNTTドコモは,ユーザーが自宅にいるときのパケット通信や通話をフレッツ回線に流せる「ホームU」を提供している。「定額サービスと併用すれば,下限料金の1029円で通話もパケット通信も使い放題になる」(NTTドコモの澤井浩一・ユビキタスサービス部・IPサービス戦略担当部長)という分かりやすい料金節約メリットがある。
ところが現状では,NTT東西に対する規制から,「フレッツ光とホームUをセットにした販売活動は展開できない」(NTT東日本)。KDDIやソフトバンク・グループが提供している固定と移動間の通話無料化といったFMC割引も提案できない。販売活動で協力関係にあるソリューション・プロバイダからは「FMC割引のようなユーザーの要望が強いサービスを提供できない以上,現行のNTTの事業分担は明らかなハンデになっている」という声が挙がる。
ノンPC開拓に欠かせない限定料金プラン
ノンPCユーザーを開拓するうえでは,パソコンでの利用を前提としている現行のフレッツ光の料金見直しも避けて通れないだろう。NTT東西が取り得る策の一つのヒントは,KDDIがマンション限定で提供している,パソコンからのインターネット接続なしの料金プランである。
光回線サービスが導入済みのマンションには,複数のユーザーで共有することが前提のVDSL集合装置やスプリッタなどの帯域分配装置が既に導入されている。KDDIはこの設備の収容効率を向上させる観点から,IP電話だけなら月額1470円,電話と映像配信だけなら月額3990円という割安プランを提供している(図2)。テレビと並び,固定電話はほとんどの家庭に設置されているノンPC端末の代表格。需要開拓の手段として,まずはマンション向けでひかり電話限定などの料金プランを検討することは可能なはずだ。
戸建て向けでも同じ考え方を適用できる。1回線を複数のユーザーで共用するシェアドアクセス型の回線でも,共用するユーザーが多くなるほど設備の利用効率を高められるからだ。現状では,地域によって8分岐回線の中で利用中の回線数にばらつきがあるという課題はあるが,利用者が集中している都市部などに地域を限定すれば,導入は検討可能だろう。
ただ,用途限定の料金プランを導入すると,光サービス全体のARPUが低下する可能性はある。こうしたアイデアについてNTT東日本は「様々な状況を想定し,検討はしている」(日森部門長)と否定はしない。実現すれば,ひかり電話が再び需要拡大のエンジンになる。