光ファイバーの料金面では,昨今,戸建て向けメニューでの料金競争が活性化してきた。NTT東西も,料金引き下げはできないまでもキャンペーン政策を見直せば,需要を掘り起こせる可能性がある。1Gビット/秒とフレッツ光よりも高速で,料金も月額1000円程度安いKDDIの「ギガ得プラン」が,その可能性を証明する(表1)。
ギガ得プランには,加入から2年間の継続利用という契約条件が付くが,その分料金を安く設定している。滑り出しは好調だ。「純増ペースは昨年度を上回っている」(KDDIの庵原武彦・コンシューマ商品企画本部・ネットワークサービス企画部・BBネットサービスグループリーダー・課長)。庵原課長は,「FTTHサービスを使いたいと思っている潜在ユーザーは,料金水準次第でまだ発掘できる」と見る。
NTT東西はこうした他社の動きに対して対抗値下げではなく,実質的にメニュー化している割引キャンペーンの充実でユーザー負担を軽減する方針。特に西日本では,電力系通信事業者との間で,割引による競争が進んでいる。2年継続契約はどの事業者でも標準的なプランとなっている。
代表的なFTTH事業者で,2年間継続の割引メニューを設けていないのはNTT東日本だけ。月々のユーザー負担はISP料金を含めるとほかの事業者よりも高くなる傾向だ。
NTT東日本は代わりに,開通から数カ月の料金を無料とするキャンペーンの手法を採っている。「2年間トータルで見れば,ユーザーの負担額は他社の継続利用割引を使った場合とそれほど変わらないはず」(日森部門長)という。ただ,競争の激しい地域を見れば,月々の料金負担が軽減するように見える2年継続契約の方がより多くのユーザーに受け入れられているのは明らかである。「2年継続割引は,ユーザーに契約内容を十分に理解してもらわないといけない。様々な可能性を含め検討している」(日森部門長)としている。
料金引き下げなければ事業規模は縮小
値下げは必ずしも減収につながるとは限らない。料金引き下げ分以上にユーザーを開拓できれば,結果として増収を導く可能性もある。通信市場の競争状況を定期的に評価している総務省が,2006年12月に京都大学の依田高典教授と共同で行った調査では,FTTHは料金を値下げすることで市場が拡大する可能性が高いという結果が出た(図1)。
調査はブロードバンド回線の選択基準についてのユーザーへのアンケートを基に価格弾力性を求めたものだ。ADSLが価格を下げても市場自体が広がらない-1以下の弾力性だったのに対し,FTTHは料金水準が現状よりも10%下がれば約24%のユーザー増が見込める傾向となった。この傾向を現在のNTT東西のユーザー増のペースに当てはめると,現行の料金水準を維持するよりも,料金を下げた方が2010年度時点のNTT東西の事業規模が大きくなる可能性がある(図2)。
この可能性はあくまで試算に過ぎない。それでも,少なくとも今以上にユーザー・ベースを広げるために,キャンペーンを含め,料金水準再考の余地はありそうだ。