NTT東西はこれまで約3年半の間,フレッツ光の料金に全く手を付けてこなかった。ここにきて純増数の拡大ペースが失速しているのは,この料金水準でも反応するユーザー層の大半を獲得してしまった側面がある。高止まりしている料金水準をもう一段階引き下げられれば,純増ペースが再び上がる可能性は十分にある(図1)。

図1●NTT東西は05年以降フレッツ光シリーズの料金を下げていない<br>新規サービスは追加されてきたが,利用料金は約3年半改定されていない。西日本の戸建て向けは6年以上も同じ料金のままである。料金は回線利用料のみ。
図1●NTT東西は05年以降フレッツ光シリーズの料金を下げていない
新規サービスは追加されてきたが,利用料金は約3年半改定されていない。西日本の戸建て向けは6年以上も同じ料金のままである。料金は回線利用料のみ。
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 ただし,NTTグループは今のところ料金引き下げについては「光収支の黒字化にメドをつけることが先決。今のところは考えていない」(三浦社長)と否定的な態度を取っている。

NGN開始で消えた値下げのタイミング

 NTT東西が簡単に料金引き下げに踏み切れない理由はいくつかある。まず,自社の光ファイバ設備を他の競合事業者に対して,ユーザー料金よりも低い卸売り料金で提供しなければならない規制だ。市場の拡大を狙って料金を引き下げると,他社への卸売り料金も下がることになり,赤字覚悟で先行投資しているアクセス回線設備のコスト回収が難しくなる。

 2008年春に開始したNGNが,まだ全国規模に広がっていないことも料金を下げにくくしている。地域IP網とその後継であるNGNへの2重投資を招きかねないからだ。

写真1●NGNの展開を1年前倒しにすると発表したNTT東日本の江部努社長
写真1●NGNの展開を1年前倒しにすると発表したNTT東日本の江部努社長

 現在,NTT東西は急ピッチでNGNを構築中。NTT東日本は中間決算で,2010年度中としてきたNGNの全国整備を1年前倒す方針を明らかにした。「地域IP網はいずれNGNに完全統合する。できるだけ早くNGNに新規ユーザーを収容できるようにして,設備の2重投資を避けたい」(NTT東日本の江部努社長)という考えを示した(写真1)。

 NGNの未整備エリアが残る現時点では,地域IP網対応のBフレッツとNGN対応のフレッツ 光ネクストを同一料金で並売している。この状態で需要拡大のために両サービスを値下げすると,地域IP網にも追加投資が発生しかねない。このジレンマが値下げを躊躇(ちゅうちょ)させている。

 とはいえ,これまで純増数の伸びをけん引してきたマンション向けサービスはほぼ頭打ちに近付いている。掘り起こしを見込める戸建て向けでは,料金面で何らかの手を打たない限り,競合他社の光サービスやADSL,CATVインターネットなどの代替手段に押されるままになる。料金の見直しは必至だ。

 マンションタイプについては,月額3000円前後と安値だが,例えば東日本地域では,既に3分の2近くの世帯をカバーするまで光ファイバを敷設済みの状況にある。今後は細経の低摩擦光ケーブルを使って,「これまで光回線が導入できなかった小規模な新築マンションや賃貸中心の分譲マンションをターゲットにする」(NTT東日本の日森敏泰・営業推進部・IPアクセスサービス部門長)というが,それも過度の期待はできない。分譲型マンションに比べ,賃貸マンションや小規模なアパートの入居者は転居率が高く,純増の足を引っ張る解約のリスクを増やすことになる。