木質ペレットの燃焼熱を利用するスターリングエンジンのコージェネシステム。写真は検証用のシステム
木質ペレットの燃焼熱を利用するスターリングエンジンのコージェネシステム。写真は検証用のシステム

 シリンダー(気筒)内部で燃料を燃やして動かす内燃機関は、ガソリンや都市ガスなど、純度の高い液体燃料か気体燃料しか利用できない。だが、外部から与える熱で、水などの作動媒体を膨張させて動く外燃機関は燃料の形状を問わない。石炭やバイオマス(生物資源)といった固形燃料を利用できる利点がある。外燃機関の代表である蒸気タービンは小型化できないが、「スターリングエンジン」ならコンパクト化が可能だ。

 スターリングエンジンは、気筒内部に密閉したガス(作動媒体)が、温度差によって膨張・圧縮する際の体積変化を使ってピストンを動かす。ピストン型ながらエンジンの外側から内部のガスを暖めるため、固形燃料でも動く。内燃機関のピストン型エンジンに比べて静かで、排ガスの環境負荷が低い。

 明星大学理工学部の濱口和洋教授と産業技術総合研究所発のベンチャー、E&E SYSTEM(群馬県太田市)は、木質バイオマスの燃焼熱を利用してエンジンを駆動させるスターリングエンジンを開発した。

欧州では家庭用コージェネに、発電効率は30%

図●スターリングエンジンの仕組み
図●スターリングエンジンの仕組み
2つのシリンダーをそれぞれ加熱・冷却し、内部のガス(作動媒体)を膨張・圧縮させることで、ピストンを動かす。ピストンの往復運動を、クランクを利用して回転運動に変える。フライホイール(弾み車)で回転力を保持し、滑らかに回す
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 木質ペレットを燃焼することで生じる約1000℃の燃焼ガスで気筒を暖める。冷却には水を使う。この温度差で2つのピストンを上下させ、クランクを動かす。クランクがフライホイールを回転させ、エンジンに接続した発電機を回す。さらに、排熱を利用してコージェネレーション(熱電併給)システムにした。

 スターリングエンジンが開発されたのは1816年と歴史は古いが、ガソリンエンジンや蒸気タービンに押されて普及しなかった。だが5~6年前から、欧州で環境性能が見直され、家庭用コージェネとして導入準備が進められている。米国では太陽熱発電所で採用されている。だが、国産のスターリングエンジンはほとんどない。

 開発した新製品の出力は3kWで、価格は300万円程度の見通しだ。寒冷地域など熱の利用量の多い地域向けのコージェネシステムとして、来年8月からサンプル出荷を開始。2010年中に販売を始め、2015年に年間10億円の売り上げを目指す。

 スターリングエンジンは作動媒体のガスを密閉するために、ステンレス製の高圧容器が必要だが、「量産すれば既存のガスエンジンコージェネと同程度まで安くできる」(濱口教授)。

 発電効率は30%。「さらなる効率アップも可能だがコストが高くなる。商品化を考えると30%程度が適当だ」(E&E SYSTEM)。熱回収後の総合エネルギー効率は80%まで高まる。