朝は慌ただしいので,自宅で朝食を食べる代わりに,最寄り駅の喫茶店に入ることが多い。付近に工業団地があるせいか,朝いちの喫茶店の客層は工場訪問前といった風のビジネスパーソンが圧倒的に多い。

 おそらく東京方面から来ているのだろう。職場に立ち寄る暇はないだろうから,客先などに行く前にアクセスのよい場所にある喫茶店に立ち寄って,コーヒー飲みながら一仕事することになる。駅カフェはそんな人たちのベース・キャンプというわけである。

 8時半~9時頃のピーク時には,ダーク・スーツで店内が黒っぽく見えるほどになる。端から見たら異様かも知れないが,私は嫌いではない。「あの人はどこの業界の人だろう,IT業界ではなさそうだけど」「あの人は営業担当で,今日は上司に同行してもらうところだな」などと,勝手に想像するのが楽しいから。

 新聞を読んでいる人は少数派。多いのはパソコンを広げている人と携帯電話で話している人(携帯でメールやネットをしている人は案外少ない)。提案書かと思われる資料を広げて確認している人もちらほらいる。

 連れのいる人は大抵,待ち合わせ前の時間つぶし兼打ち合わせという感じ。技術者を同行する営業担当者や,共同提案中のパートナー企業の営業同士ではないかと思わせる2人連れもいる。緊張感をみなぎらせて作戦会議に白熱する人もいれば,世間話をしつつリラックスしている人もいる。

 つい最近見た上司と部下の2人連れ(おそらくIT関係)は,独占していたシステムだかネットワークだかの一部を,不幸にして競合にリプレースされ,目下敗戦処理中のようだった。「とにかく,よそと一緒になるのは初めてなんで…」と不安げに語る担当営業に,テコ入れ役として同行するらしい上司がいろいろとアドバイスしているようだった。

 少し前には,ベテラン営業っぽい2人が頭を寄せて,ひそひそと「藤井さんがどう出てくるかですよね…」「そうね」などと相談をしているのを見た。「藤井さん」とはお客さんのキーパーソン,あるいは競合のことだろうな。会話の切れ端だけで何が分かるわけでもないが,雰囲気は伝わる。

 年度末が近づくにつれ,時々見られるようになったのが,携帯電話で盛大にアポ入れしている人。「○○の△△です…あ,やはり今はお忙しいですか。そうですよね…ではまたご連絡させて下さい」。大変だなあ,もう10件以上撃沈している。でもここでのアポ入れはちょっと頂けない。だって社名も名前も丸聞こえだもの。

コアなモバイル・ユーザーの困りごと

 ちょっと話はそれたが,そんなわけで朝の駅カフェには,否応なく出先でパソコンを使わなければならないモバイル・ユーザーが集結している。朝に限って言えば,この店の客のパソコン携帯率は極めて高い。6組あるテーブル席の4,5組にノート・パソコンが乗っかっている(私のもその1つだ)こともザラだ。

 ちなみにこの店は,ネット・カフェではない。無線LANサービスをやっているわけでもない。それでも,みんな当然のように通信カードを持っているから特に困らない。唯一の切実な問題は「電源」である。

 ネット・カフェも確かに便利だ。でも,ごく普通の喫茶店でコンセントが使える,というのが一番ありがたい。スターバックスコーヒーや喫茶室ルノアールなどは一部の店舗で電源を開放しているが,それでも電源が使える場所はとても少ない。

 はたしてITpro読者に喫茶店関係者がいるかどうかは謎だが,とにかく「求む,電源カフェ」という意思を表明しておきたい。設備投資は延長コードと張り紙程度で済むだろう。ついでに企業のロビーに使えるコンセントがあったら,かなり嬉しいと思う。新幹線などの待合室にも,一部にあるようだがもっと増やしてほしい。関係各位,ご検討下さい。