「いつまで使うのか」、そして「いつ捨てるのか」-。ムダなコストを使わないよう今あるシステムを最後まで使い切るには、“余命”の把握が欠かせない。この努力を怠るとハード/ソフトの保守サポート期間切れに直前で気付き、あわてる羽目になるかもしれない。ほとんどビジネスに貢献しないシステムを保守し続け、予算を無駄に垂れ流す可能性だってある。

 システムの寿命をコントロールする第一歩は、余命の把握から始まる。

 保有するハード/ソフト資産の種類や数、購入日、購入価格、簿価などはどこの企業も台帳で管理している。だがハード/ソフトの保守サポート期間がいつ切れるかや、保守運用費に見合った効果をシステムが上げているかまで、きちんと管理できている企業はほとんどない。

システムの余命年表を作る

 「当たり前のことだが、自社のシステムは自分で守らなければならない」。JUKIの松本部長は、ユーザー自らがハード/ソフトの余命を管理する重要性を強調する。冒頭で紹介した、ハードの保守切れをメーカーから突然通告された経験に基づく発言だ。あの事件以降、ハード/ソフトの保守サポート期間を管理し始めた(写真1)。

写真1●JUKIはシステムの余命を一覧表で管理する<br>保守サポート切れまで2~3年以内は黄色、切れると赤色で表示
写真1●JUKIはシステムの余命を一覧表で管理する
保守サポート切れまで2~3年以内は黄色、切れると赤色で表示
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 約100種類のシステムで使うハードとソフトの保守サポート期間を表計算ソフトで管理する。会計や生産管理といった基幹系システムだけでなく、利用部門が自作したシステムも管理対象に加えた。「システムの大小にかかわらず、事業に影響がありそうなハード/ソフトの余命はすべて調べた」と松本部長は説明する。

 使用ハード/ソフトの保守サポート期間を年表形式にまとめた。保守サポート期間終了まで2~3年を切ったら「黄色」、保守サポート期間が切れたら「赤色」で表記する。「何年後に保守期間切れのピークがくるのか」や「いつから対策を考えるべきか」を一目でわかるようにするためだ。

 保守サポート期間が切れても、すぐにハードやソフトを買い替えるわけではない。

 保守サポート期間が切れるとハードは修理できなくなり、ソフトはバグなどの修正プログラムを入手できなくなる。こうした状況で使い続けても、万が一のときに事業に影響がないかどうか、JUKIではシステムごとにを見極める。保守切れのハードを継続利用する際は、交換部品を入手できるかどうかもあらかじめ調査しておき、故障に備える。

余命が短いものは保守しない

 システムはむやみに延命すればよいというものでもない。すでにビジネス上の寿命が尽きかかっているシステムは、あまり手間をかけず余生を全うさせるのもシステム部門の役目だ。

 横河電機は2007年末から、現行の基幹系システムのアプリケーション保守を全面禁止にした。早ければ2009年末にSAP製ERPに基幹系を全面移行するメドがたったからだ。

 「2年後になくなるシステムを維持するために限られたIT予算は使えない」。橋本朋弘情報システムセンター長は現行システムの保守を中止した理由を説明する。「現行システムの機能が流動的だと、新システムの仕様決定にも影響を及ぼす」との判断もある。

 会計制度や調達先の変更など、事業に大きく影響する案件は、例外としてアプリケーションの保守・改修を認める。ただし必要性を冷静に判断する。システムの保守・改修にかかる費用と、システムに手を入れず手作業で代替した場合の人件費や作業時間を比較して、メリットがあったときにだけ保守・改修を認める。