ソフトバンクの参入で一時は火がついた料金の値下げ競争。基本料半額や家族内定額などの相次ぐ導入で消耗戦に突入する気配もあったが,現在は落ち着いている。野村證券 金融経済研究所 企業調査部 情報通信産業調査室長 主席研究員の増野大作氏は「現在は業界を挙げて収益性の回復に取り組んでいる途上」と見る。さらに今後は「データARPUの向上を狙えるチャンス」とする。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


増野氏の眼
携帯電話の契約数 2009年度は約400万件の純増
端末の販売台数 2009年度は4050万~4070万台
端末メーカーの動向 2009年度は機種数が激減
業界の注目ポイント 2009年度はデータARPUの向上に追い風

携帯電話の契約数は今後どの程度伸びそうか。

 伸びるのは間違いない。純増数は少しずつ減ってきているが,法人向けを中心に2台目需要がある。個人向けもスマートフォンは2台目が多いと言われる。

野村證券 金融経済研究所 企業調査部 情報通信産業調査室長 主席研究員 増野大作氏
野村證券 金融経済研究所 企業調査部 情報通信産業調査室長 主席研究員 増野大作氏
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 さらに今後は,データ通信カードの需要が盛り上がると見ている。イー・モバイルの好調さを見れば分かるように,ネットブックとデータ通信カードの組み合わせで新たな需要が生まれている。(データ通信のユーザーが多い)ウィルコムの契約数が大幅に減っているわけでもないので,新しい市場が広がっていることは明らかだ。低価格PCは現在の不況にもマッチしている。

 携帯・PHSを合計した2009年度(2009年4月~2010年3月)の純増数はデータ通信カードを含め,約400万件と予想している。2010年度(2010年4月~2011年3月)は約300万件の予想を出しているが,この頃にはモバイルWiMAXやLTE(long term evolution)も立ち上がっており,これらの需要は明確に織り込めていない。

端末の販売台数が落ち込んでいるが,2009年以降はどうなりそうか。

 2008年度(2008年4月~2009年3月)の販売台数は対前年度比2割減の約4100万台と見ている。ただ,この数字は下期の商戦次第の面があり,景気の動向にも大きく左右される。下期(2008年10月~2009年3月)のスタートは相当悪い。2009年度はさらに若干減って4050万~4070万台の見通しだ。

当面は4000万台前後で推移するということか。

 今後は増えることなく,減り続けると見ている。2010年度も数%減り,4000万台を下回る水準を予想している。なぜなら,2~3年後には第二の買い控えが起こるから。現在は割賦に入らないという買い控えが起こっているが,それでも4000万人が端末を購入している。これらのユーザーが割賦の支払い期間の満了と同時に端末を買い換えるかと言えば,そうはならないだろう。今の携帯電話の品質を考えれば2年後でも十分に使える。不満も特にないだろう。当面は微減の傾向が続くと見ている。