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日経SYSTEMS

第25回 上司が原因のストレス 溜め込まずに吐露する

2009/02/19
出典:日経ITプロフェッショナル 2004年9月号  p.13
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
Q 私の上司は,とにかく細かい指示を出してきます。特に仕事の進め方についてもうるさく口を出し,仕事を任せてもらえません。最近では息がつまりそうで,上司が側に来るだけで席を立ちたくなります。このままでは仕事のモチベーションが下がる一方です。(28歳,男,SE)

 筆者のカウンセリングを受けに来た人に「職場のストレスで最も大きいものは何ですか?」と尋ねると,ほとんどの人が「同僚や上司との人間関係」と答えます。特に多いのが上司との人間関係です。「上司が話を聞いてくれない」,「言っていることとやっていることが違う」,「上にだけペコペコする」,「公平に評価しない」,「いちいち指示してくる」など,上司に対して不満を持っている人はとても多いものです。

 質問者の場合,細かく指示されすぎて,仕事が面倒になっているのでしょう。「そんなにいちいち言うくらいなら,自分でやったらどうだ」と思っているかもしれません。さらに,「もうやってられない。勘弁してくれ」,「この人の下では働きたくない」,「そうは言っても現実からは逃げられない」・・・。そう思うとブルーな気持ちになり,意欲を失っていく自分がいるのだと思います。

 しかし,人間はこのような不快な気分に対処するために,様々な「心理的防衛」を働かせるものです。「あの人は上司の器ではない」,「あの人のことはもう考えない」,「俺なんかまだいいほうだ,同僚はもっと大変」,「こんな職場いつか辞めてやる」などと思って,自分の気分を静めるのです。ところが,「心理的防衛」が追いつかなくなると,心のバランスが崩れます。そうなると質問者のように,上司が側に来るのも耐えられない,という状態になってしまいます。この状態が続くと,上司のいる部署や会社までが嫌になってしまい,出勤もできなくなります。これは一種の「ノイローゼ(不安障害)」で,不快な対象がどんどん“拡散”した状態と言えます。

 こういう場合に大切なのは,はやり上司へのストレスを溜め込まずに,誰かに吐露することです。専門家のカウンセリングを受けるのも良い方法でしょう。

 先日,質問者と同じような悩みを持ったAさんが,筆者のカウンセリングを受けにやってきました。Aさんは「会社を辞めたい」とまで思い詰めており,胃にも潰瘍ができていました。

 Aさんは上司に対して「もっと自分のやり方で仕事がしたい。私に任せてください」と,自己主張したかったそうです。しかし,「同僚も我慢しているのに自分だけが言うわけにはいかない」,「1年前にある部下が口答えして散々な目に遭った。上司は自分に歯向かう者は必ず切り捨てる」といった理由から,現実には何も言えずに悶々としていました。

 「本当は嫌なのに懸命に適応しようとしているAさん自身に,どんな癒しの言葉をかけてあげたいですか」と,筆者が尋ねると,Aさんは「愚痴も言わずに一生懸命努力している自分を褒めてやりたいです」と答えました。カウンセリングの結果,Aさんは「葛藤している心を無理矢理抑圧すると,身体に症状が出たり,上司を避けようとする行動に出ることがよく分かりました。何も言えない自分が嫌だったのですが,今は自分を認めることができます。仕事も何とかやっていけそうな気がします」とも言ってくれました。悩みを他の人に打ち明ける行為には大きな効果があるのです。

武藤 清栄
東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。著書に「人の話を聞ける人聞けない人」(KKベストセラーズ)など

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