マネジメント/情報システム分野で,ITpro読者が2009年に最も注目したいITキーワードとして挙げたのは「クラウド・コンピューティング」。昨年の5位からの躍進である。6位の「SaaS(Software as a Service)」と10位の「PaaS/IaaS(Platform as a Service/Infrastructure as a Service)」を合わせると,得票数はさらに倍近くに伸びる。注目キーワードで見る限り,2009年がクラウドの年になるのはほぼ間違いない。

表1●2009年に注目したいマネジメント/情報システム分野のITキーワード
表1●2009年に注目したいマネジメント/情報システム分野のITキーワード(有効回答数=2043)
(有効回答数=2043)
表2●2008年に注目したマネジメント/情報システム分野のITキーワード
表2●2008年に注目したマネジメント/情報システム分野のITキーワード(有効回答数=2043)
(有効回答数=2043)

 2009年に入ってからも,クラウド関連の動きは活発だ。NTTデータはSaaS事業の強化に向け,エックスネットにTBO(株式公開買い付け)を実施(関連記事「NTTデータが証券関連のSaaS事業者にTOB」)。IBMはLotus製品のクラウド版である「LotusLive」を発表した(関連記事「IBMがLotusのクラウド版「LotusLive」を発表」)。富士ソフトは4月から,従業員1万人を対象にグーグルの有償アプリケーション・サービス「Google Apps Premier Edition」を導入する(関連記事「富士ソフト,全従業員1万人が有償版Google Apps利用へ 」)。

 企業システムの観点からは,2009年はクラウド・コンピューティングにとって勝負の年となるだろう。大量でかつ重要なビジネスデータやトランザクション処理を“雲”の上に載せるのはどれだけ現実味のある話なのか。景気低迷の時代のニーズに見合う効果が出せるのか。結局は小規模または特定分野の利用にとどまるのか。こうした疑問への回答が求められる年になりそうだ。

 クラウドがトップになったのは,オバマ米国大統領ではないが“チェンジ”の時代の表れともみなせる。2008年のマネジメント/情報システム分野における注目キーワードのトップだった「内部統制/日本版SOX法(J-SOX)」は,2009年には7位に後退した。キーワードのトップが「管理」の象徴から「変化」の象徴へと変わったわけだ。

 J-SOXの順位が下がったのは,すでに適用初年度に入っており,注目キーワードとの印象が薄れたためとみられる。内部統制報告書の作成や監査が本格化する今年前半は,さまざまな混乱が起こることが予想される。一方で,J-SOX 2年目をにらんだ動きもすでに出ている(関連記事「狙いはJ-SOX 2年目以降のコスト削減、オラクルが職務分掌管理ソフト」)。

 第2位には,IT分野としては異例のキーワードが入った。新型インフルエンザに関する「パンデミック(世界的な大流行)」である(関連記事「パンデミック前夜の経済危機に思う」「事業継続の意味を問いかける新型インフルエンザ」)。

 企業にとって,パンデミックへの対策はBCP(事業継続計画)の観点からも急務となっている。ITベンダーの動きも盛んだ。富士通やNEC,大塚商会などが対策サービスの提供に乗り出している(関連記事「富士通が新型インフルの対応策定サービス,ひな型利用で迅速に」「新型インフルエンザ対策でNECが実証実験、大塚商会はBCP支援」)。

 パンデミックもクラウドとは別の意味で変化の象徴である。2009年はこれまでに増して変化に富む年になりそうだ。