情報の不足をなくすには,表記法に準拠する,とことん書き込む,チェックリストで確認するなどの対策がある。これらの事例を紹介しよう。

クラス図の表記法を守る

 ユースケース図やE-R図など,設計書の中には表記法が定義されているものがある。表記法に従えば,情報の不足は起こり得ない。だが「ネット上でいいかげんな表記の設計書がはんらんし,必要な情報があいまいになっている」と豆蔵の井上樹氏(ES事業部 主幹コンサルタント)は指摘する。特に多いのが,モデルの構造や関係を表すクラス図である。次の四つの情報が不足しがちだという(図2)。

図2●四つの不足をなくしたクラス図の例<br>豆蔵の井上樹氏は,「関連線の端」や「操作」「属性の型」など四つの情報がクラス図に漏れがちだと指摘。情報が不足したクラス図では,詳細設計以降の問い合わせに追われるという
図2●四つの不足をなくしたクラス図の例
豆蔵の井上樹氏は,「関連線の端」や「操作」「属性の型」など四つの情報がクラス図に漏れがちだと指摘。情報が不足したクラス図では,詳細設計以降の問い合わせに追われるという
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 一つ目は,関連線(クラス同士の関連を表す線)の説明。誘導可能性(参照方向)や多重度などを線の端に記述する必要があるが,何も書いていないケースがある。二つ目は操作(メソッド)。実装時には必須の情報だが,属性だけしか示されていないものがある。三つ目は属性の型。数値や文字列など型を明確にしないと,現場ではプログラマの主観が入り込む。四つ目はクラスや属性などの英語名。プログラミング言語は英語がベースになっているので,英語名がないと「顧客」というクラスが実装時に「customer」や「client」などバラバラに定義されかねない。これらの不足を避けるために,表記法を正しく理解し,必要な情報をしっかりと書き込みたい。