余計な内容をなくすには,読み手が本当に必要な内容のみを記述するのが前提である。図や表を使って,長文を単語で表現するテクニックもある。各設計書から類似情報を切り出して,情報の密度を下げる方法も有効だ。
読み手に必要な情報のみを記述する
オージス総研の山口健氏(アドバンストモデリングソリューション部 部長)は「読み手ごとに不要な内容をそぎ落とすことが重要だ」と指摘する。図5に示したのが,同じ業務フロー図を業務担当者向けと開発者向けに書き分けた例である。ともに一つのユースケース図を基に作成したものだ。
業務担当者向けは,受注担当者が主体となっている。受注管理業務の流れをフローで示し,システムが機能を提供する部分は色を変えて区別している。一方,開発者向けの業務フロー図は,主体が受注管理システムとなり,処理の流れを示している。
「業務担当者は業務の流れとシステムとの関係を,開発者は処理の流れと業務との関係を知りたい。それ以外はノイズだ」と山口氏は説明する。
図や表を使って単語で表現する
設計書の中には,文章で記述するものも多い。だが「文章で記述すると,補足的な内容をあれこれ書き込んだり,長文になったりしがちだ」と,電通国際情報サービスの宮田始紀氏(金融ソリューション事業部 開発7部 グループリーダー)は指摘する。宮田氏が実践しているのが,表を使った画面設計書の作成である(図6)。
表を使った設計書には,二つの利点がある。一つは,表に記載する項目を洗い出す過程で,本来伝えるべき内容が明らかになる点だ。文章で記述していたころは,検索条件やソート順を細かく記述していた。「表で整理すると,その中から本筋の内容と補足的な内容がそれぞれ浮かび上がる」(宮田氏)。本筋の内容を表に記載し,補足的な内容は注釈扱いにすればよい。図6左ではごちゃごちゃ書かれていた検索条件を「画面設計書の6.1.1を参照」と注釈扱いにすることで,すっきりしていることが分かる。
もう一つは,各項目の関係が整理されるので,単語を示すだけで意味が伝わる点だ。文章だと「検索ボタンが押下された場合,以下の処理を実施する」などと記述する必要があるものも,表にすれば,項目名「検索」,アクション種別「押下」,アクション内容「エラーチェックを行う」と三つの単語だけで表現できる。