「STARTREK」などのSFドラマ/映画につきものなのが、ワープ(超光速飛行)やテレポーテーション(転送)だろう。実際に場所を移動できるわけではないが、未来の“理想の自分(体型)”を見るための開発が進んでいる。日本ユニシスらが取り組む3D(次元)体型シミュレータだ。理想像を脳裏に焼き付ければ、本当にその姿になれるかも!?

図1●3D体型シミュレーションの例
画像提供:日本ユニシス・浜松ホトニクス
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 だれもが知っている、ドラえもんの「どこでもドア」も、テレポーションの一種。それほどに、「私も素敵なところへ行きたい!」という想いは、老若男女を問わず共通なのだろう。とはいえ、現実にはまだまだ無理な話。ただ、シミュレーション技術を使えば、過去や未来の自分と対面することができる。中でも、全身像を3D(次元)画像で見せてくれるのが、日本ユニシスが開発中の「3D体型シミュレータ」である(図1)。現在の体型データを元に、例えば「体重を10kg減らせた場合の体型」などが確認できる。

 未来の姿を明確にイメージすることは、目標達成に有効とされる。若手ビジネスマン/ビジネスウーマン向け雑誌など流行っている、「やりたいこと、なりたいことを手帳に書こう」といった特集をみれば、目標を手帳に書けば社長にだってなれるようだ。メタボリック症候群対策においても、ウエスト85cm以下(女性は90cm以下)だとか、体重何十kg以下と、数値だけで目標管理するよりも、全身像をみられれば、「おお、こんなに格好良くなれるなら、少しは頑張ってみようかしら」と思える。これがきっと、目標を“見える化”することの効果なのだろう。

 しかしである。3D体型シミュレータにおいて、最も動機付けの力が強いのは、将来の理想像よりもむしろ、“現時点”の体型そのものだ。3D体型シミュレータの開発プロジェクトを牽引する日本ユニシスの碓井聡子ビジネスデベロップメントセンタービジネス推進室(ヘルスケア事業担当)マネージャーは、「数値による“見える化”は頭では分かっても実行できない。3D化によって、感情に訴えることが可能になる。“ショック”のほうが継続的な行動に結びつくのではないか」と考える。

3D体型スキャナーは転送装置の雰囲気

図2●3D体型スキャナーで読み取った“現実”は、かなりショック
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 実際、自身の3D体型を目にすることは、相当に“ショック”である。後ろ姿はもとより、真横から見た姿、すなわち自分の姿勢を目の当たりにすれば、だれもが少なからずショックを受けるはずだ。実体験した記者も、「メタボな姿をさらすことは仕方がない」と覚悟していたけれど、姿勢の悪さには言葉すら出なかった(図2)。記者を測定してくれたビジネス推進室(ヘルスケア事業担当)の小田原正和主任は後から、「何度か測り直したデータを登録した」と教えてくれたが、先に教えてほしい。

 体型の測定自体は至って簡単だ。身体にフィットする下着だけを付け、3D体型スキャナーの中央に、若干足と手を広げて立つだけ。カーテンが閉まった後の薄暗がりの中、「ジジーッ」という音とともに測定部が移動すれば終わりだ(写真1)。この間は、SF映画などで目にする転送装置に入っているような感覚にはなれる。実際、記者の身体は現実世界から、コンピュータという仮想世界に転送されている。