Q:開発者として配属されたはずが,毎日雑務ばかり。何の技術も付かないと思い転職を考えています。これから転職に必要な能力を培うにはどのようにすればいいのでしょうか?

 毎日,ただただ雑務が多く,開発者として配属されたはずが,プログラミングをやる時間はほとんどないという状態です。上司には,何度も「ちゃんとした開発に携わりたい」と言っているものの,教育をする体制もないため,外注のプログラマに開発のほとんどの仕事を任せてしまいます。

 このまま,この会社にいても,何の技術も付かないと思い,転職も視野に入れているのですが,これから転職に必要な能力を培うにはどのようにすればいいのでしょうか。また,どのような会社を選べば,技術力を身に付けつつ,社会に還元することができるのでしょうか。大学院を卒業後,働き始めたので,年は取っていますが,社会人としては2年目です。
(SE/女性・26歳)

A:拙速に転職に走る前に,まずは自分の状況を冷静に分析せよ。

 ちょっと待ってください。転職を考える前に,あなたの状況をもう一回整理してみましょう。ひょっとしたら大きなチャンスを逃そうとしているのかもしれないのです。

 現在どのような会社にお勤めなのかがよく分からないのですが,一般にユーザー系および元請けSI会社では,「プロジェクト・マネジャー(PM)促成栽培」を行います。あなたはこの促成栽培コース(つまり,一種のエリートコース)に乗っている可能性がありますので,よく確かめてみましょう。

 SE,PM,経営者を経験した私から言わせていただければ,大学院を出た優秀な女性で,しかも上司に食ってかかる意欲があり,さらに技術力で社会貢献したいと思うような方は,会社としても貴重な人材なのです。

 実は私も大学院を出てIBMに入社し,最初の年に,ある銀行のプロジェクトに一時配属されていたことがあります。そこで最初に上司が命じたのは,男の私に「お茶汲み」でした。外資系では社内でのお茶汲みはありませんので,非常にびっくりし,多少憤りも覚えました。

 しかし,お茶汲みや資料の整理などの雑用をこなしていくうちに,プロジェクトにかかわる人々や,そこで何が行われているかが少しずつ分かってきました。その後,プロジェクトの隙間の,小さな,しかし重要なOS回りのプログラム1本の開発をアセンブラでやらされたのです。初めての実戦開発で随分失敗して,先輩たちに迷惑もかけましたが,それで自信もつきました。

 その後,その他の現場を経験して,いきなりある開発プロジェクトのリーダーを任されました。入社3年目のことです。若造の私にとって,最初のお茶汲みの経験が活きたのは言うまでもありません。お客様,自分の会社,そして外注の人々がどのようにプロジェクトにかかわっているのか,そして現場でどんなことが起こっているのかを知っていたからこそ,大任を任されたのだと思います。幸い,このプロジェクトが成功して社内で表彰されたことが,私がエリートコースに乗ったきっかけでした(それでも10年後に転職したのですが)。