この記事のテーマは「IPv6(アイピーブイロク)」だ。IPv6は,現在利用されているIPv4(アイピーブイヨン)の問題点を解消するために登場した新しいインターネット・プロトコル(IP)である。

アドレス枯渇問題を解消する

 IPv6で解決されるIPv4の最大の問題点とは,グローバル・アドレスの枯渇である。IPv4で利用できるグローバル・アドレスは約43億個である。IPv4が開発された当初は,これで十分な数であると考えられていた。だが,インターネットの利用が広がるにつれ,この状況は徐々に変わってきた。特に1990年代後半からインターネットの利用者が爆発的に増え,さらに携帯電話や情報家電などの機器が登場してくると,グローバル・アドレスが足りなくなる恐れが出てきた。

 そこでIPv6では,アドレスを表すビット数をIPv4の4倍にあたる128ビットへと大幅に拡張した。こうしたことで,IPv6では無限ともいえる数のアドレスがとれるのである。

 ただし,IPv6を利用するには,端末などのホストはもちろん,ルーターをはじめとするネットワーク機器もすべてIPv6対応にする必要がある。このため,1995年の登場から10年以上が経つものの,まだIPv6は普及したとは言い難い。

 とはいえ,IPv6を標準で組み込んだWindows Vista(ウィンドウズ・ビスタ)の登場や,IPv6のマルチキャスト機能を利用したNTTのNGN(next generation network/ネクスト・ジェネレーション・ネットワーク)といった商用サービスが始まることで,IPv6が使われる条件は整ってきたといえるだろう。

 本記事では,IPv6の最大の特徴であるIPアドレスを中心に,Lesson1~4の4ステップで理解を深めていく。

変わるアドレス体系

 Lesson1では,まずIPv4と異なるIPアドレスの表記方法を見ていこう。アドレス長が128ビットと長くなったため,表記の仕方が大きく変わる。それに合わせてパケットのヘッダー形式も変わるので押さえておく。

 Lesson2では,IPv6でデータ・パケットをやりとりする際に使われる「グローバル・ユニキャスト・アドレス」について解説する。IPv6ネットワークで端末同士が通信するために使う基本的なIPアドレスなので,しっかり覚えてほしい。

 Lesson3では,IPv6で使われるグローバル・ユニキャスト・アドレス以外の三つのアドレスについて紹介する。IPv6で通信をするには,グローバル・ユニキャスト・アドレス以外のアドレスを併用する。別のIPv6端末と通信できるようになるまでの流れを見ながら,これらのIPv6アドレスの使い方を確認する。

 Lesson4では,IPv4と併用する手法を解説する。IPv6は当分の間,IPv4と併用されるはず。そこで,IPv4とIPv6が混在するネットワークで使う通信手法などを紹介する。

 最後の修了テストで,Lesson1~4をどれだけ理解できたかを確認しよう。IPv6アドレスについての自分の理解度がわかるはずだ。