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真髄を語る

株主資本主義が日本のIT産業を変える

2008/12/25 ITpro

上武大学大学院経営管理研究科教授
池田 信夫

 「株主資本主義が日本のIT産業を変える」という表題を見て、「米国流の株主資本主義が馬脚を現したのが今回の金融危機ではないのか」などと思う読者がおられるだろう。しかし、株式会社とは本来、株主が会社を所有し、コントロールする議決権を持つ仕組みである。

 経済学者の池田信夫氏は、IT関連企業を含め日本のかなりの企業はこの原則を貫いておらず、その結果として古くからある多重下請け構造を温存してきた、と指摘する。この構造は高コストであり、しかも新しい企業が育ちにくい。池田氏は「本来、株式会社という方式は、ベンチャー企業のようなプロジェクト・ベースの事業に向いている」とし、大企業や下請け構造を組み替えるとともに、新しい企業が生まれるファイナンスの仕組みを整備すべきと主張する。(「経営とIT新潮流」編集部)


 経済産業省の北畑隆生事務次官(当時)が2008年1月、講演会で「株主はバカで浮気で無責任」と発言した一件は、投資家から厳しい批判を浴びた。彼は「誤解を招いた」と陳謝したが、これは単なる失言ではない。ふだん省内で彼が言っていることを、うっかり内輪の講演会で話してしまっただけだ。本質的な問題は「バカ」という表現ではなく、彼が株主資本主義を否定し、企業買収防衛策を強化しようとしたことだ。

 しかし企業買収で利益を上げられるのは、買収して企業価値を上げ、高く売却できるからである。つまり経営者が企業価値を最大化していれば、それ以上は企業価値を上げることができないから、買収を心配する必要はないのだ。

 北畑氏自身が、同じ講演で「時価総額が安いから買収をされる。買収を防ぐためには、日ごろから配当を増やして時価総額を上げていなければいけない」と語っている。それが分かっているなら、なぜ経産省は買収防衛策を講じるのか。答は一つだ。現在の日本企業が効率的な経営をしていないからである。つまり、問題は株主ではなく、こんな経営を続けている経営者と、それを守ろうとしている役所にあるのだ。

資本主義を拒否する日本

 資本主義の原則は「会社は株主のものだ」ということである。経営者も従業員も、会社と契約を結んでいるだけで、会社をコントロールする法的権限(議決権)はない。ところが日本の会社は、まったく違う生い立ちをたどった。形の上では、明治時代に株式会社の制度が導入されたが、財閥の経営する大企業の株式は公開されず、公開された株式は一種の「市況商品」として売買されただけで、株主が会社をコントロールするという意識はなかった。

 さらに戦時体制になると、資金を銀行に集中する「指定金融機関制度」によって株式市場は消滅し、戦後も長く銀行優位の時代が続いた。この結果、中小企業にハイリスク・ハイリターンで資金を供給する仕組みが育たず、銀行が信用のある大企業に融資し、その大企業が中小企業に仕事を発注する「多重下請け構造」ができた。これは、ある種の製造業には適した仕組みだった。

 自動車のように部品数の多い複雑な製品をアメリカのGMやフォードのような垂直統合型の巨大企業でつくると、膨大な部品製造部門を社内に持たなければならない。一時期のフォードはフロントグラスまで自社で生産していたが、これでは需要が大きく落ち込んだときに過剰設備や過剰人員が発生し、無駄が多い。他方、部品を外注すると、品質管理が行き届かず、不良品が出やすい。

 日本の下請け構造は、こういう問題を解決するのに適していた。親会社を頂点にした下請け・孫請けのピラミッド型の系列構造があるが、こうした企業は子会社ではないので、売れ行きが落ちたら切ることもできる。とはいえ通常は長期にわたって取引するので、設計段階から協力して、品質管理をしやすい。

 IT産業でも、メインフレームの時代には、こうした日本の系列構造が強みを発揮し、1970年代には日本のコンピュータ・メーカーがIBM互換のメインフレームを作り、品質でも価格でもIBMをしのぐようになった。これに対してIBMは、ソフトウエアを著作権法で守るよう制度改正を要求する一方、「産業スパイ事件」で日本メーカーを摘発させるなど、自動車や家電で世界を制覇した日本がコンピュータも制覇することを警戒していた。

 1980年代には、こうした「日本的経営」が賞賛された。経営学者マイケル・ポーターは、日本にはアメリカのように短期的な利益を求める株主の圧力がないため、経営者は長期的な視野から多くの企業と協力して業務を進められるのだ、と株主資本主義を批判した。日本の銀行には「メインバンク」として企業を指導するエリートが集まり、大蔵省や通産省のエリート官僚と一体になって、世界最強の「日本株式会社」を運営している、といったイメージが世界に広がった。

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