窓口スペースの確保と並行して検討すべきなのが、来庁者にとって、分かりやすく案内ができる「顧客目線」での使い勝手の良い総合窓口を設計することである。今回はそのためのポイントについて検討したい。

 前回は、総合窓口を導入・構築するための窓口スペースの確保の方法について検討してきた。そこで今回は、窓口スペースを来庁者の立場に立ってさらに使いやすい窓口を設計するためのポイントについて検討したい。

動線の検討は顧客目線で徹底的に

 窓口スペースの確保と並行して検討すべきなのが、来庁者にとって、分かりやすく案内ができる「顧客目線」での使い勝手の良い総合窓口を設計することである。そのために、まず行うべきことは、来庁者がどのように窓口に訪れて、帰っていくのかという動線の検討であろう。

 例えば、松山市の場合、総合窓口の開設前の動線では、目的別に来庁者がいちいち各担当部署間を移動していたが、総合窓口の開設後は、呼び出し表示で案内された来庁者が1カ所で手続きを済ませることができるようにした(図1、2)

図1●松山市の総合窓口開設前のフロアと来庁者の動線
図1●松山市の総合窓口開設前のフロアと来庁者の動線
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図2●同 総合窓口開設後のフロアと来庁者の動線
図2●同 総合窓口開設後のフロアと来庁者の動線
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 こうした来庁者本位の動線をデザインするためには、来庁者が実際にどのような順番で、どの部署の窓口に訪れているのか、また窓口で迷ったり、混乱が生じていないかといった実態を把握し、分析する必要がある。

 一般的に動線調査では、来庁者に対して、窓口を訪れた目的(ライフイベント別の目的に応じた窓口サービスの種類)や提出する申請書(届出書)、訪れた窓口の部署(訪れた順番も含む)を窓口サービスの利用評価とあわせてアンケートを実施して把握したり、各窓口で来訪者を案内している様子を窓口職員の担当にヒアリングしたり、実際に窓口に立って来訪者の動きを観察したりといったやり方がある。

 加賀市では、こうした来庁者の動線調査に加えて、ビデオカメラを受付窓口の後方に設置して撮影し、その様子を観察・記録することによって、来庁者の窓口における行動を可視化(見える化)したのである。そうして可視化された実際の来庁者の動きをつぶさに考察することにより、加賀市では、窓口フロアの待合スペースの椅子の配列や、来庁者が通る通路を50cm程度下げるといった変更を行ったのである(図3)

図3●加賀市の改善後の窓口フロアの配置
図3●加賀市の改善後の窓口フロアの配置
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 さらに来庁者が窓口で迷ったり混乱したりすることを防ぎ、待ち時間の解消を図るため、発券機を導入し、専任のフロアマネージャを配置(フロアマネージャ不在時の代役は課長職員級が担当)した。窓口カウンターの配列も、発券機・順番表示板の設置を念頭に、届出・申請カウンターと相談カウンターのラインを整理し、さらに分かりやすく変更している。(写真1、2)

写真1●加賀市の総合窓口の様子(1)
写真1●加賀市の総合窓口の様子(1)
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写真2●同 総合窓口の様子(2)
写真2●同 総合窓口の様子(2)
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 このような窓口における来庁者の動線の検討は、すでに銀行や病院、ショッピングセンター、コンビニエンスストアなどの民間企業では、当たり前のように行われているが、自治体の窓口ではあまり取り入れられていない。ぜひとも自治体の窓口においても取り入れて、深く検討されていくべきであろう。なお、動線の検討においては、来庁者にとって一番使いやすいことや、待ち時間が短縮されることを優先するため、必ずしも来庁者にとって最短ルートであるとは限らないこともある。